日本映画祭2025: 日本のヌーヴェルヴァーグ特集

2月4日(火)から7日(金)にかけて、アテネのカコヤニス財団ホールにおいて、在ギリシャ日本大使館はミハリス・カコヤニス財団及び国際交流基金との共催で、「日本映画祭2025」を開催します。
映画祭は国際交流基金「海外巡回日本映画祭」の一環で、今回は1960年代に閉塞性を打破し、新しい何かを見出そうとする姿勢から「日本のヌーヴェルヴァーグ」と呼ばれた国際的にも評価が高い映画監督5人の作品を上映いたします。いずれの作品もギリシャ初公開で、映画史に残る珠玉の作品が4Kデジタル修復を経てスクリーンに色鮮やかによみがえります(ギリシャ語・英語字幕付)。
オープニングの2月4日(火)は、19:30にセレモニーが行われた後、篠田正浩監督の 『乾いた花』 が上映されます。続く5日から7日にかけて、上記に加え新藤兼人監督の『裸の島』、田中絹代監督の『女ばかりの夜』、鈴木清順監督の『殺しの烙印』、今村昌平監督の『神々の深き欲望』が上映されます。
また、映画祭開催期間中、会場ホールにはいけばな小原流ギリシャ支部のソフィア・スピサ副会長による生け花の作品が展示されます。
以下の上映スケジュールをご確認の上、皆様奮ってご来場下さい。なお、チケット情報についてはカコヤニス財団に直接お問い合わせください。
開催期間:2月4日(火)・5日(水)・6日(木)・7日(金)
会場:ミハリス・カコヤニス財団 (206, Piraeus Str., Tavros)
共催:在ギリシャ日本大使館、ミハリス・カコヤニス財団、国際交流基金
広報協力:ERT、ラジオSecond Program、ラジオKOSMOS, インターナショナル・ニューヨーク・タイムズ-英字版Kathimerini紙
入場料:3ユーロ(各回上映)
<チケット情報>
ミハリス・カコヤニス財団
Tel. 210 341 8550 http://www.mcf.gr
<お問い合わせ先>
日本大使館・広報文化班:
Tel. 210 670 9900 e-mail: cultural@at.mofa.go.jp
https://www.gr.emb-japan.go.jp
http://www.facebook.com/EmbassyofJapaninGreece
<上映日程>
2月4日(火) オープニング
19:30 乾いた花(監督 篠田正浩 1964年96分)
2月5日(水)
19:00 裸の島(監督 新藤兼人 1960年95分)
21:00 女ばかりの夜 (監督 田中絹代 1961年95分)
2月6日(木)
19:00 殺しの烙印 (監督 鈴木清順 1967年/91分)
21:00 神々の深き欲望(監督 今村昌平 1968年175分)
2月7日(金)
19:00 乾いた花(監督 篠田正浩 1964年96分)
21:00 裸の島(監督 新藤兼人 1960年95分)
<上映作品情報>
乾いた花 監督:篠田正浩 (1964年/96分 モノクロ)

石原慎太郎原作の短編小説を篠田監督が映画化。花札賭博に憑かれたヤクザと、賭場で出逢った不思議な少女との愛と悲劇を通して“真実の愛”が浮き彫りになる。森英恵によるスタイリッシュな衣装に身を包んだ加賀まりこが、賭場でひときわ異彩を放つ。明朗喜劇の印象が強い松竹にあって、篠田正浩は闇と光の強烈なコントラストで裏社会の男女を描き、公開が延期されお蔵入りも危惧されたほどの異色作となった。音楽は日本の現代音楽を代表する武満徹と高橋悠治が担当。海外の監督たちの間でとても人気が高く、本作に魅了されたF・コッポラやM・スコセッシが、鑑賞用にフィルムを購入したことでも有名。
【あらすじ】
やくざ仲間の争いから人を殺して三年ぶりに出所した村木(池部良)の足は賭場に向かった。賭けの緊張感とその後の虚脱感だけが村木に生を実感させた。その賭場で見慣れない若い女、冴子(加賀まりこ)に出逢う。茣蓙を見つめる熱っぽい眼差しと勝負への放胆さを持つ冴子に村木は羨望と嫉妬を感じた。冴子にせがまれて大規模な賭場に案内した村木だったが、その部屋の隅に中国帰りで殺しと麻薬だけに生きている葉(藤木孝)という男に気づく...
【キャスト】
池部良 加賀まりこ 藤木孝 原知佐子
【映画祭・受賞歴】
2022 ベルリン国際映画祭 クラシック部門出品
裸の島 監督:新藤兼人 (1960年/95分 モノクロ)

不毛の小島を舞台に、人間と自然の格闘を詩情豊かに描いた新藤監督の有名作。登場人物は限られ、台詞も殆ど排された野心的な作品だが、力強い映像と音響はかえって感動を招き、第2回モスクワ国際映画祭でグランプリを獲得し、世界60数ヵ国で上映。驚くことに製作スタッフは僅か13人、近代映画協会の自主配給で公開された。
【あらすじ】
瀬戸内海に浮かぶ、電気もガスも水道も通っていない周囲約500メートルの孤島。ここに、千太(殿山泰司)とトヨ(音羽信子)夫婦と幼い兄弟2人の家族が暮らしている。島には水がなく、夫婦の労働の大半は隣の島から舟で水を運ぶことに費やされている。痩せた土地を耕し、舟で水を汲みに行き、急斜面を登って運ぶ日々。貧しい生活の中、楽しいひとときを過ごした一家を突然の不幸が襲う...
【キャスト】
音羽信子 殿山泰司 田中伸二 堀本正紀
【映画祭・受賞歴】
1961 モスクワ国際映画祭 グランプリ(最優秀作品賞)
1962 ナショナル・ボード・オブ・レビュー 最優秀外国映画
1963 英国アカデミー賞 総合作品賞ノミネート
女ばかりの夜 監督:田中絹代 (1961年/95分 モノクロ)
溝口健二『夜の女たち』(1948年)で街娼を演じた田中絹代が、売春婦たちの更生と社会的自立を描いた監督第5作。梁(やな)雅子の原作『道あれど』をもとに田中澄江が脚色。1958(昭和33)年に売春防止法が完全施行されたが、法の網の目を潜る売春婦は後を絶たなかった。警察に検挙された女性たちは、強制的に厚生寮等へ送られ一定の教育期間を経て更生へと踏み出すのだが、彼女たちを迎える社会は冷たく、多くの困難が待ち受けていた。
【あらすじ】
売春婦の更生施設、白菊婦人寮には邦子(原知佐子)、チエ子(北あけみ)、亀寿(浪花千栄子)ら数十人が収容されていた。彼女たちは野上(淡島千景)、北村(沢村貞子)など熱心な寮母の指導で規律ある生活を送っていた。模範生の邦子は職安の斡旋で食料品店で勤めはじめる。ところが、米屋の洩らした一言から他の店員が彼女の過去を知り、主人の妻よし(中北千枝子)に告げ口した事からあらゆる差別待遇に苦しめられる毎日が続き生活は一変する...
【キャスト】
原知佐子 北あけみ 浪花千栄子 淡島千景 沢村貞子 香川京子 夏木陽介
殺しの烙印 監督:鈴木清順 (1967年/ 91分 モノクロ)

日本映画史に残る怪作。当時日活で量産されたアクション映画の意匠を顛倒させ、映画表現の限界に臨んだ鈴木清順監督のアクションもの。アクションのエース・宍戸錠を主人公に“失敗は死”という宿命を背負いながら、No.1の座をめぐって死闘を繰り広げる殺し屋たちの姿をスリリングかつスタイリッシュに描いた異色作。本作は公開時、批評家や若い映画ファンに熱狂的に支持された一方で当時の日活社長からは評価が低く物議をかもした。しかし、やがて高い評価を国外からも受けるに至り、クエンティン・タランティーノ、ジョン・ウー、パク・チャヌクらがその影響を認めている。
【あらすじ】
ランクを競うプロの殺し屋たち。プロの殺し屋No.3にランクされている花田(宍戸錠)は、No.2とNo.4の殺し屋一味に襲撃されてしまう。危うく危機を脱した花田は、ある日、薮原(玉川伊佐男)から四人を殺して欲しいという依頼を受ける。花田は自分の持つ最高のテクニックを用いて次々と指名の人間を消していき、残すはあと一人。失敗を許さない組織は美沙子(真理アンヌ)という女を差し向けてきた・・・。
【キャスト】
宍戸錠 南原宏冶 玉川伊佐男 真理アンヌ 小川万里子
【映画祭・受賞歴】
1967年 英国映画協会"The best Japanese film of every year"に選出
2022年 ベネチア国際映画祭 クラシック部門 最優秀復元映画賞受賞
神々の深き欲望 監督:今村昌平 (1968年/175分)
巨匠・今村昌平監督が1968年に発表した日活時代の集大成的作品。
現代文明から隔絶された南海の孤島を舞台に、神話の伝統を受け継いで生活する島人と近代化との相克、日本人の根源を描いている。
【あらすじ】
神への畏怖と信仰が根付く南海の孤島・クラゲ島に大暴風と津波が直撃。嵐が去ると、神への供物を捧げる田んぼに真っ赤な巨石が屹立していた。神の怒りに触れたと恐れる島民たちは、兵隊帰りの太根吉(三國連太郎)と妹のウマ(松井康子)との怪しい関係が要因だと考え、穴を掘って巨石を始末するよう根吉に命じる。それから20年間、穴を掘り続けた根吉だったが…。そんななか、東京から製糖会社の技師・刈谷が調査で島を訪れ...
【キャスト】
三國連太郎 河原崎長一郎 北村和夫 沖山修子 松井康子