ギリシャ経済最新情報 |
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2010年3月
1.概況 2009年対GDP比で財政赤字が12.7%、政府債務が113%に達するギリシャの財政問題が国際的に注目されており、国債市場のみならず実体経済にも影響が見え始めている。ギリシャ政府がEUへ提出した安定成長計画においては、社会保障制度改革や脱税対策、公務員採用や賃金を抑制することで2012年までに対GDP比財政赤字を2.8%とする旨明記するとともに、EUからの指摘を受ける形で追加的経済施策の実施も発表している。 ギリシャ政府は、2009年対GDP比12.7%の財政赤字を、2010年8.7%、2011年5.6%、2012年2.8%、2013年には2.0%まで削減する目標に向け、大幅な歳出削減を実施するため、2010年以降断続的に政府消費の減少が予想される。さらに、政府財政の再建の必要性により、給与及び可処分所得の増加は困難と考えられるため、民間消費の減少も予測される。これにより、期待される投資や輸出等の改善も相殺され、2010年のGDP成長率は、2009年の-2.0に引き続き、マイナスが予想される。
2.財政 ※『ギリシャの財政問題について』参照 3. 雇用 2009年第4四半期の失業率は10.3% 、失業者は51万4千人と推定され、前年より31%増となった。今後については、経済改善が期待される2010年第3四半期まで失業率の増加が予想されており、2010年3月末には12%を超える可能性も指摘されている。 4.輸出入 内需低迷より2009年の輸入は-24.7%まで落ち込んだが、2010年も同様に-5%程度となることが予想される。 一方輸出については、2009年は-16.5%となったが、2010年は欧州、特に南欧の経済回復が見込まれるため、これが海運業など対外貿易に影響することにより一定程度の回復が期待される。 5.主な産業分野 (1)住宅産業 住宅建築は2008年-29.1%に引き続き、2009年も-22.0%となった。住宅投資は依然として下降傾向にあり、2010年も同程度のマイナス成長、 2011年まで回復しないことが予想される。 (2)海運業 2008年海運収益99億ユーロに対して、2009年は65億ユーロ、-35%の落ち込みと予測されており、これが 国内消費や住宅投資縮小に大きな影響を与えていると考えられる。 (3)観光業 2009年第1~3四半期の外国人観光客数は-6.7%(2009年上半期-8.6%)、同年1~11月の外国人観光客からの収入は-10.8%(同年1~7月は-15.8%)となっている。ホテルやレストラン等を主とする観光売上は2009年第1~3 四半期全体においては-6.7%となっているが、同年四半期毎では-20%、-4.6%、-2.3%と改善されてきており、第 4四半期にはプラスが期待されている。 (4)金融業 ギリシャの銀行はここ10年来ギリシャ及び南東欧諸国の成長に寄与しており、世界的金融危機にも拘わらず、2009 年も回復傾向を示しており、基本的には安全性と流動性を維持していると考えられている。また、現在問題となっているギリシャ国債については、発行額全体の16%程度のみをギリシャ銀行が保有していると予測されており、これは銀行資産の8%程度を構成するに過ぎない。格付会社による格下げがなされる中、ギリシャの銀行が多く進出する南東欧諸国の経済改善による好影響が期待されている。 6.民営化・構造改革 (1)ギリシャ政府による民営化計画 2月、ギリシャ政府は、2010年度予算における25億ユーロの歳入確保に向け、欧州最大手のくじ会社(OPAP)、ガス公社、EYDAP及びEYATH(水道公社)を対象とした3カ年民営化計画を進める旨発表した。電信電話会社(OTE)の株式については、ドイツテレコム社への現状以上の売却は予定されておらず、ギリシャ政府は上記4社の民営化に注力すると見られている。 (2)年金制度に関する主要方針の発表 2月、労働・社会保障大臣は、年金制度に関して、早期退職制度を廃止し、退職年齢を平均2年引き上げ、公的機関職員については2013年度までに男女の退職年齢を同等にするなどの主要方針を発表した。ギリシャ財政から年金制度への補填は2005年時点では89億ユーロだったのに対し、2009年には158億ユーロに達している。 (3)スクラマンガ造船所の買収状況 3月、ギリシャ政府は、独ティッセンクルップ社が所有するスクラマンガ造船所(Hellenic Shipyards)に関し、造船会社であるAbu Dhabi Mar(ADM)社への株式譲渡を承認する旨発表した。これによりADM社の株式保有率は75.1 %、ティッセンクルップ社の保有率は24.9%となる。 (4)ピレウスのインフラ整備改良計画 3月、ギリシャ政府は、ピレウスにおける15億ユーロ相当のインフラ整備改良計画を発表し、中国コスコ社を始めとする投資家の関心喚起を図った。同計画は、EU基金、官民パートナーシップ基金、欧州投資銀行及び民間投資より拠出される。 (5)ギリシャ鉄道協会の財務健全化計画 3月、ギリシャ政府はギリシャ鉄道協会(OSE)の救済を図り、財務健全化計画を今夏までに完成させる旨発表した。政府は、OSEの歳入増加を図り、運賃の値上げを検討している。OSEの累積債務は100億ユーロを超えており、1日あたり220万ユーロの損失が発生している。同社の歳入は年間約1億ユーロであるが、3億6千万ユーロは利払い、4 億ユーロは従業員給与の支払いとなっている。 (6)新規税制改革の検討 3月、ギリシャ政府は歳入増加に向けた税制改革法案の閣議決定を行い、同法案を国会に提出した。同税制は専門職従事者(弁護士、公証人、作家、芸術家、ジャーナリスト、金融業者、保険業者、報道関係者、郵便事業者等)に適用されている優遇税制の見直し、免税対象者に対する生活費支出証明書(レシート)提出義務(これにより、従来領収書を発行していなかったガソリンスタンド、キオスク及びタクシー等がレシート発行を余儀なくされ、脱税防止に資することとなる)、証券取引におけるキャピタル・ゲイン税(15%)導入、宝飾品等の贅沢品への追加税率引き上げ(プラス10%まで)及び新規住宅購入者への税徴収強化が含まれており、同制度の多くが本年中に施行予定となっている。 7.その他関連情報 (1)オリンピック航空とエージアン航空の合併 2月、ギリシャの二大航空会社のオリンピック航空とエージアン航空は、航空業界での競争力強化に向け合併に合意した。オリンピック航空の主要株主であるマーフィン・インベストメント・グループ(MIG)とエージアン航空のバシラキス・グループは、新会社の運営について従業員計5850人、路線(国内及び国際線)計106路線、航空機計64 機で業務を行う旨合意し、オリンピック航空の社名及びロゴを継承する。 (2)ギリシャ・ブルガリア間天然ガスパイプライン建設の合意 3月、ギリシャ環境・エネルギー・気候変動大臣、ブルガリア経済・環境大臣及び伊経済開発次官は、テッサロニキにて開催された南欧エネルギー会議においてIGBパイプライン(ギリシャ北部のコモティニとブルガリアのスタラ・ザゴラ(ハスコボ)間を連結する天然ガスパイプライン)の設計、建設及び商業開発に向けた会社設立について合意した。 (3)カタールの LNG 基地局建設への投資計画 3月、ギリシャ政府報道事務局によれば、カタールはギリシャ中央部アスタコスにおける50億~60億ユーロ規模の LNG基地局建設の投資に関心を示しており、同投資計画にはLNG基地局及び発電所建設、バイオマス・エネルギーの技術使用が含まれ、8日ギリシャとカタール政府間において当該計画を進める方向で合意がなされた。
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