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      ギリシャの財政問題について(2010年5月)

2010年5月

1. 4月以降の動き
3月25日の合意に基づき、4月11日、ユーログループによる電話会合においてギリシャ支援が必要となった場合の詳細が決定された。当該枠組みの用意により、ギリシャ国債の利回りの低下が期待されたが、その後の短期政府債権発行においても利回り低下とならず、ギリシャは市場からの借入に困難が続いていた。

約85億にのぼる国債償還期限となる5月19日に向けて、4月9日にはフィッチがギリシャ国債の格付けを二段階引き下げるなど、ギリシャ国債を保有するギリシャ国内銀行の借り入れコストについても懸念が生じていた。 22日には EU 統計局により2009年ギリシャ財政赤字が従来予測の12.7%を超えて13.6%となった旨、更なる上方修正の可能性もある旨の発表があり、同日のムーディーズによるギリシャ国債格下げ、27日のS&Pによる三段階の格下げ等により、ギリシャ10年国債の利回りは10%を超えるものとなった。

23日、ギリシャ政府によりユーロ加盟国及び IMF による支援プログラムの発動要請が行われた。これを受けて、5月2日、 EU 及び IMF とギリシャ政府の合意によるギリシャにおける経済政策プログラム、ユーロ加盟国・ IMF による 1100 億ユーロ規模の支援プログラムの発動が発表され、5月7日にはユーログループ首脳会合において正式合意となった。

一方、欧州中央銀行(ECB)は、5月3日に発表されたギリシャ政府発行・保証証券に対する担保基準の一時停止に引き続き、10日にはユーロ圏公的債権及び民間債権市場への介入を実施、米ドルスワップ協定の再開を発表している。

 


欧州委員会春期経済見通し(ギリシャ: 2010年)
    2007 2008 2009(推計) 2010(推定) 2011(推定)
実質 GDP 成長率(%)  
4.5
2.0
-2.0
-3.0
-0.5
個人消費支出
3.3
2.3
-1.8
-3.5
-2.4
公的支出
8.4
0.6
9.6
-7.0
-3.1
総固定資本形成
4.6
-7.4
-13.1
-5.5
-0.8
輸出
5.8
4.0
-18.1
2.6
4.1
輸入
7.1
0.2
-14.1
-10.5
-3.4
失業率  
8.3
7.7
9.5
11.8
13.2
消費者物価  
3.0
4.2
1.3
3.1
2.1
貿易収支(GDP比)  
-17.7
-16.6
-14.0
-12.0
-10.9
経常収支(GDP比)  
-14.7
-13.8
-13.1
-10.3
-8.6
政府財政収支(GDP比)  
-5.1
-7.7
-13.6
-9.3
-9.9
政府債務残高(GDP比)  
95.7
99.2
115.1
124.9
133.9


2.経済政策プログラム
5月2日に発表された48億ユーロ規模の財政赤字削減策は、1月に提出された98億ユーロ規模の安定成長計画、3月に発表された58億ユーロ規模の追加的経済施策に引き続き、VATの引き上げ等国内的に大きな負担を強いるものとなった。当該プログラムは、大きなストライキやデモを引き起こしつつも、5月6日に議会を通過した。概要は以下の通り。

今後の実施計画として、年金制度や労働市場等の構造改革、更なる VAT の引き上げ等も明記されている。

ギリシャ政府による財政予測 (単位:ユーロ)
 
2010
2011
2012
2013
2014
インフレ率 1.9 -0.4 1.2 0.7
0.9
GDP成長率 -4.0 -2.6 1.1 2.1
2.1
名目GDP 2320億 2240億 2280億 2350億
(中央) 政府財政赤字 (対GDP比) -8.1 -7.6 -6.5 -4.9
-2.6
  188億 170億 148億 115億 
(中央) 政府債務 (対GDP比) 133.3 145.1 148.6 149.1
144.3
  3093億 3250億 3388億 3504億 


2010年財政赤字削減施策 (単位:百万ユーロ)
 歳入
 VAT 引き上げ
(21%→23%,10%→11%)
800

燃料税引き上げ
 
200

たばこ税引き上げ
 
200
 一般旅券の査証欄増補
     50
 
 歳出  

公務員ボーナスの削減 1,100
13及び14ヶ月分年金支給廃止 1,500
 最大年金給付額の削減 350
手当補助の削減 400
間接経費削減 700
公共投資削減 500
 
2010年以降の削減計画 (単位:百万ユーロ)
 
2011
2012
2013
 
2011
2012
2013
VAT引上げ
1000
 公務員のボーナス/手当の削減
400
   
VAT課税対象拡大
1000
500
 公務員の雇用削減
600
 500
燃料税引上げ
250
 公務員給与システムの一元化
100
 
たばこ税引上げ
300
 13及び14ヶ月分年金支給廃止
500
 
アルコール税引上げ
50
 最大年金受給額の削減
150
非アルコール飲料税引上げ
300
 年金受給額削減
100
250
 200
高級品特別税引上げ
100
 失業手当削減
500
グリーン税(CO2排出税)
300
 間接経費削減
300
賞金付きくじ収入課税
200
 公共投資削減
500
500
    0
くじ販売ライセンス課税
500
225
-725
 公的企業再編等
    0
   0
4200
黒字企業特別課税
600
 他
500
500
 500
専門職推定所得課税
400
100
 
 
車両リースへの課税等
150
 
 
所得明細の詳細化
50
 
 
不動産の法的価値の引上げ
400
200
 
 
土地利用に関する違法行為規制
500
100
 
 
不法住宅への課税
800
 
 
 
   合計
9150
 5575
4775


3.ギリシャ支援メカニズム
(1)ユーロ加盟国及びIMFによる1100億ユーロ支援

4月11日、ユーログループは臨時会合を開催し、必要な場合に実施される IMF と協調したギリシャ支援に関する3カ年共同計画の条件等について合意した。ユーロ加盟国は欧州委員会を通じたECBへの出資比率に即した二国間融資により財政支援を提供することとし、初年は300億ユーロ(この他IMFから150億ユーロ)の融資の準備を開始することとなった。利率は、ユーロ銀行間取引(EUROBOR)3カ月物を基に300bpを上乗せして決定し(4月時点で約5%)、更に3年以上の融資残高に対しては100bp、オペレーションコストとして一回50bpを課金される。

ギリシャからの支援プログラム発動要請を受けて、5月2日、ユーログループは3カ年で1100億ユーロの融資(ユーロ加盟国分800億ユーロ、IMF分300億ユーロ)を発表し、9日にはIMF理事会が3年間合計300億ユーロ規模の支援の実施を決定した。 12日にはIMF から55億ユーロ、18日にはユーロ加盟国から145億ユーロの送金が実施され、ギリシャ国債の大量償還時期となる5月19日前に利用可能となった。今後は EU により四半期毎にギリシャの経済政策の実施状況の確認が行われ、一部報道では9月及び12月にそれぞれ90億ユーロ(ユーロ加盟国分65億ユーロ、 IMF分25億ユーロ)が利用可能予定となっている。

当該支援策において最大の負担割合27.92%となるドイツは、ギリシャ支援に対する国内的問題を抱えつつも、3年間で224億ユーロ(初年84億ユーロ)の支援が3日閣議決定され、7日には議会承認を得るなど、各国ともユーロ防衛の一環として比較的迅速に対応がなされている。

(2)ECB による支援
本来のECBの受入担保の最低格付はA-であったが、2008年10月から2010年末までの期間限定にてBBB-に引き下げられていた。その後、BBB+と評価されるギリシャ国債に配慮し、2010年末を超えても当該緩和基準が維持されることとしたが、更に、5月3日、ギリシャ政府の発行・保証する証券について担保適格性基準を緩和する旨発表し、ギリシャを特別扱いしないとしていたECBにとって大きな政策変更となった。

また、10日には、ユーロ圏の公的債権及び民間債権市場への介入の実施等の施策を決定し、金融市場で生じている緊張状態に対応することを発表している。


4.今後の動き
5月7日~10日にかけた各種措置により、一旦は市場も落ち着きを見せたが、ギリシャ政府による債務再編やデフォルトの懸念は終息しておらず、今後は経済政策プログラムに即した各種施策の確実な実施及び国内的混乱の収拾が期待される。しかしながら、経済活動の低下が深刻化した場合、対GDP比財政赤字の削減が困難となるだけでなく、デフレによる債務の実質的拡大という問題も想定され、難しい舵取りが求められる。

(1)ギリシャ政府の動き
①脱税防止へ向けた動き  
ギリシャ政府は、脱税防止へ向けた動きを加速させている。4月にはスイミングプール保有者による脱税行為摘発に向け、衛星写真を使用したプール所有世帯の撮影を実施、5月には領収書の発行及び患者の受診登録を行っていないアテネ市内高級地区の医師57名の個人名リストを脱税の疑いがあるとして公表した。

また、2009年度の賃金労働者及び年金受給者による所得申告と企業による給与支払申告の相互確認を実施した結果、14万9,323人が所得を過小申告しており、雇用主の給与支払申告との差額は2億590万ユーロに達する旨、及び2万 8,177人が年間1 万ユーロ以上の所得があるものの適正な申告を行っておらず,当該所得の合計は5億 700万ユーロにのぼる旨を発表している。

観光副大臣の配偶者による脱税行為も表面化し、今後は脱税の疑いのある企業及び個人のリスト作成も予定されており、 積極的な努力が続けられるものと予想される。

②構造改革へ向けた動き
5月、ギリシャ政府は年金制度改革法案を閣議決定した。同法案は、2018年からの基本年金額の設定や年金支払額や勤務期間に基づいた年金給付システムの導入を目指すとともに、自発的退職プログラムを禁止し、早期退職にペナルティを強制することにより退職平均年齢の引き上げ、全職業統一の年金給付額算出手法の導入等を目指している。

また、ギリシャ国内の1034の市町村を325 に統合する法案が議会へ提出され、報道によりと地方行政当局の職員を現在の5万人から2万5千人へ削減する等業務費削減により年間11億8千万ユーロの削減が見込まれている。

③経済成長戦略
今後はギリシャ経済活性化という根本的な問題解決に向けた成長戦略も必要となるが、 GDP及び雇用において大きな割合を占める観光業は、 経済危機やデモ、ストライキ活動の影響を受けており、 ホテル協会によると ホテル宿泊者数は前年比10%減少しており、観光業組合関係者も2010年観光収入を前年比 -7~-9 %と予想している。

このような状況の中、政府も観光振興策を目指し、新たな航空路線の開設等を発表した。コードシェアにより、オリンピック航空がオーストラリア及び南アフリカへ乗り入れ、エージアン航空が東京・大阪、北京・上海へ乗り入れ、その他ロシアやウクライナとの直行便増強や北米とのコードシェア便増強が予定されている。

外国投資の活性化も期待されており、中国企業コスコは同社提携3社とともに,アジアから欧州への入港に際してピレウス港を主要港として利用する旨発表した。また、地勢的優位性を持つ再生可能エネルギー分野についても、ライセンス取得簡素化等を目指した新たな法律を成立させるなど積極的な動きを見せている。

法律分野等の専門職への参入容易化や派遣労働制度の導入等の労働市場の開放も検討される 一方、非EU籍クルーズ船によるギリシャ乗入れ・停泊のみならず、客の乗降も可能とする政府方針に対してはピレウス港でストライキが実施される等、今後も規制緩和や成長戦略に対する抵抗も予想される。

(2) 国内の反応  
失業率(2月) が12.1% に上昇する中、4月末時点における新聞等各種世論調査では、労働組合によるストライキやデモに対しては否定的な見解も多く、今回の財政赤字問題に端を発した経済危機対策について政治改革の良い機会と捉える声も大きい。また首相適任者としては現首相の名前を挙げる者が一番多い結果となっている。

(3)ユーロシステム

EU及びIMFから支援される1100億ユーロは当面ギリシャが市場からの資金調達を必要としない額であるとともに、 ECB においてギリシャ国債の担保価値が認められ、ユーロ圏公的債権市場への介入実施も発表されたことから、ギリシャ国内銀行のみならず、ギリシャ国債を有するEU域内の銀行にとっても大きな安全網となった。

ギリシャの財政赤字問題は、ポルトガルやスペインといった同様な問題を抱える各国を含め、ユーロ圏全体へ波及し始めている。5月9日の財務大臣会合で決定された 7500 億ユーロ規模の欧州金融安定化メカニズムは大きな意義を有するが、十分なユーロの信頼性回復には至っていない。今後その詳細を市場に対して明確化するとともに、ユーロ圏の運営のあり方、各国財政に対する監視システム等、共通金融施策と各国別財政施策という根本的問題に対する回答が迫られている。
 
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