2015年 5月
1. 内政
マケドニア大学が13日~15日に実施した世論調査によると、チプラス首相支持率が2カ月前の70%から、50%に下がった。支援プログラム交渉については「交渉戦術が間違っている」が41%で、初めて「正しい(35%)」を上回った。また、61%の回答者が現状に応じて選挙前公約の変更も考えるべきとの結果が出ている。
2.外交
(1)対米関係
20日、訪米したカメノス国防相はウォームス国防副長官補と会談し、クレタ島の軍事基地の海軍部分をNATO基地としてカルパソス島に移行し、NATO陣営の南部境界を強化する提案をした。
(2)対露関係
(ア)7日、チプラス首相はプーチン・ロシア大統領と電話会談を行い、4月8日の会談での合意(特にトルコのパイプラインの延長としての「ギリシャ・パイプライン」建設)は完全に有効であることを認め、米国の「代替案」を受け入れないというメッセージを発した。
(イ)10日、コンスタンドプル国会議長が,モスクワで行われた戦勝70周年記念式典にギリシャ代表として出席した。
(ウ)11日、チプラス首相は、ロシアのストルチャク財務副大臣から、BRICS諸国が設立を予定している開発銀行に参加するよう要請され、検討すると述べた。
(3)アルバニアとの領土問題
アルバニア政府は、8日イオニア海における資源開発調査計画変更の要請に続き、ギリシャに対しイピロス地方(注1:アルバニアとの国境を含むギリシャ北西部の地方)における炭化水素資源開発に関する地図の提供を求めてきた。アルバニアがギリシャとの国境に疑問を呈する試みであるとの見方がある。また、27日、ラマ・アルバニア首相がギリシャ政府に対し、両国間の領海設定に関する新たな協議開始を求めた。
(4)軍事演習
ギリシャ・米国・イスラエル3か国合同海軍演習が2週間に亘って行われ、14日に終了した。この演習は過去最大の規模で、ギリシャのクレタ島スーダから始まり、イスラエルのハイファに移動した後、最後は東地中海で実施された。
3.経済
(1)ギリシャ支援プログラムをめぐる動き
(ア)11日,ギリシャはIMFへの7億6,400万ユーロの返済を行うと表明、期限日である12日に実行。この返済はギリシャがIMFに持つ緊急準備金を取り崩して行われた。(これに先立つ8日、チプラス首相は、ラガルドIMF専務理事、ユンケル欧州委員長、ドラギECB総裁に書簡を送り、ECBがギリシャにT-billの発行上限の引き上げを認めない限り、(公務員の賃金や年金の支払いを優先させるので)12日のIMFへの返済は行うことはできない旨を表明すると共に、リュー米財務長官にも電話し、状況を説明した。)
(イ) 21日、リガで行われたEU首脳会議のフリンジで、チプラス首相はメルケル独首相、オランド仏大統領と会談。22日にはユンカー欧州委員会委員長と会談したが、これらの会談は支援プログラムを合意に導く政治的な突破口にはならなかった。
(2)財政
ギリシャ財務省が5月26日付で公表した2015年1月から4月の財政統計によると、2015年1月から4月の財政収支は5億1,000万ユーロの赤字となった。一方、同期間のプライマリーバランスは21億300万ユーロの黒字となった。同期間の歳入は158億1,500万ユーロで政府目標を3億7,100万ユーロ(2.4%増)上回り、歳出は163億2,400万ユーロと政府目標の183億6,100万ユーロより20億3,700万ユーロ低く抑えられた。
(3)輸出入
ギリシャ統計局の5月8日付の発表によると、2015年3月の輸入総額は43億6,680万ユーロ(前年同月比7.8%増)となった。一方、輸出総額は23億5,560万ユーロ(前年同月比8.5%増)となった。
(4)観光業
ギリシャ観光業協会(SETE)の5月19日付の発表によると、2015年4月の観光客は70万7,486人で前年同月比6.6%増となった(国内主要空港の観光客到着数(暫定値)ベース)。内訳としては、アテネ空港が30万9,865人(同21.3%増)、テサロニキ空港が11万5,252人(同0.5%減)となった。
4.経済指標
(1)消費者物価指数
ギリシャ統計局の5月8日付の発表によると、2015年4月の消費者物価指数は前年同月比2.1%の下落となった。
(2) 失業率
ギリシャ統計局の5月6日付けの発表によると、2015年2月の失業率は25.4%となり、前月から0.2%減少した。
※2015年1月の失業率は、ギリシャ概況(2015年4月)公表後、ギリシャ統計局により25.7%から25.6%に修正されており、本号では当該修正後の数字を使用した。
※各種報道・公表資料を基に作成。
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