ギリシャ経済最新情報 |
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2011年12月 1.概況 10月26日の欧州理事会は、7月21日に合意された対ギリシャ第2次支援の内容を見直すとともに、期待されていたユーロ危機に対する包括策を取りまとめた。しかし、詳細な点(例えば50%のギリシャ国債ヘアカットをどのような手法により実施するか等)について後の協議にゆだねている部分が多く、債務危機の解決に向けて今後も予断の許さない状況が続いている。さらに、合意直後のパパンドレウ首相(当時)による突然の国民投票実施表明は、ギリシャ支援並びにユーロ危機の先行きに対する不透明感を高め、アテネ株価指数の大幅な下落やユーロ相場の下落など市場の混乱につながった。 パパンドレウ首相退陣後、元ギリシャ中央銀行総裁であり、欧州中央銀行副総裁も務めたルーカス・パパディモス氏を首班とする新政権の下(PASOKと最大野党である新民主主義(ND)そして国民正統派運動 (LAOS) による連立内閣)、第2次支援の鍵を握るギリシャ国債ヘアカットをめぐる民間債権者(銀行等)との協議は開始から約1ヶ月過ぎた現在(12月末)も続けられているが、50%のヘアカットをもってしてもギリシャの債務を持続可能な水準に落ち着かせることは困難との論調も聞かれるようになっている。 足下の経済では、9月の失業率が8月から約1%改善し17.5 %となったものの依然として高い水準で停滞しており、若年層(15~24 歳)についても46.4 %と前年の33.6%から10 %以上の上昇となっており厳しい情勢が続いている。また、IMFによれば 2011 年の経済成長率は-6%と大幅に落ち込むものと見られており、実体経済の停滞が財政赤字削減目標の達成をより困難なものにしている。財政赤字については対GDP比7.5 %を目標としていた 2011 年の目標達成が難しいばかりか、 2012年予算における見通し(9%)からも更に落ち込み、10%に達するとする報道もなされており、追加策の限られる中で厳しい財政運営が続いている。
2.財政 財務省発表によれば、2011年11月末時点の財政執行状況は、歳入438.6億ユーロ(前年同期比3%減)、歳出 627.1億ユーロ(前年同期比 6.2%増)となっており、厳しい財政運営状況が続いている。特に国債等利払費が155.4億ユーロ(前年同期比20%増)となっており、歳出に占める利払い負担の増加が財政を圧迫する構図となっている。協議の続く民間債権者の自発的ヘアカットによる利払い負担の軽減が重要である一方、プライマリーバランスの黒字化の観点からは、更なる増税による歳入増は困難と見られていることから年金改革、構造改革等による一層の歳出削減が求められる。 3.消費者物価指数 ギリシャ統計局の発表によれば、2011年11月の消費者物価指数は、前年同月比2.9%の上昇となった。一方、月ごとの変動幅では、例年夏季セール時(7、8月)に見られる前月比の物価指数の下落幅が、本年については2009年、2010年と比較して大きくなっており、財政緊縮策を受けた不況が影響しているものと考えられる。 4 .輸出入 2011年1月から9月の貿易(燃料及び船舶を除く)収支の赤字幅は、同期の商品輸入(燃料及び船舶を除く)が4.6%減(2011年第 3四半期単独の商品輸出は、前年同期比1.5%増)となったこと、後述の輸出増により前年同期比20.1%減となった。 2011年1月から9月の商品輸出(燃料及び船舶を除く)は前年同期比18.8%増、燃料及び船舶を含む全体としては150億6千万ユーロ(前年同期比23.6 %増)となった。2011年通年では206億ユーロ(対GDP比9.2 %)に達すると見られている。 5.主な産業分野 (1) 海運業 2011年1月から9月の商業用船舶到着数は前年比10.3 %減(2010年同期は15.5 %増)、同期の海運業による収益も前年比 10.5%減(前年同期は12.5 %増)と共に前年からの落ち込みが見られ 2011 年上半期の GDP 成長率に影響を及ぼしたものとみられる。 (2) 観光業 ギリシャ統計局によると、2011年上半期の観光客到着数は、530万人(前年同期は466万人)に上り、前年比13.9%増となった。地域別では、アジアからが前年比30.4 %増、南北アメリカからが14.3 %増となっている。日本からは 5,939 人と前年同期比-7.7% となっている(他国からのクルーズ船による一時滞在は含まれない。)。ギリシャ観光業組合(SETE)によれば、 2011年1月から11月の国内主要空港への観光客到着数は、1,140 万人に上り、前年比8.9% 増となった。また、2011年1月から9月の観光業による収益は、93億ユーロと前年比10.4 %増となった。また、ギリシャ文化・観光省によると、 2011年の外国人観光客到着数は、過去最高の1,650 万人に上ると予想されている。 (3)金融 国内主要銀行は、 2011年11月末から12月初めにかけて本年第 3 四半期の決算(表 1 参照)を発表したが、今般債務問題の懸念による預金流出や、ギリシャ国債の評価損計上により、主要銀行全行が赤字を計上した。また、 2011年1月~ 9月の国内主要銀行の預金流出は顕著となり、各行の預金は、ナショナル銀行は13%減、アルファ銀行は 20.5 %減、ユーロ銀行は 13.9 %減、ピレウス銀行は 15%減、農業銀行は12.7%減となった(それぞれ前年同期比)。今回の決算は、各行が保有するギリシャ国債を21 %ヘアカットした場合(2011年7月のユーログループ会合で決定された対ギリシャ第2次支援での合意内容。)の評価損を計上したものとなっている。このような状況を受け、ナショナル銀行及びピレウス銀行は増資のためにギリシャ政府へそれぞれ10億ユーロ、4億ユーロの優先株を発行することを12月末に株主が承認した。
6.民営化・構造改革 (1)アテネ国際空港の民営化状況 アテネ国際空港の民営化(運営権譲渡拡大)をめぐり、ギリシャ政府(交渉担当は公有財産運用基金で、中期財政計画2012年- 2015年実施に関する緊急措置法にて設立された民営化実施機関。)は独ホッホティーフ社との協議が難航していたが、2011年11 月上旬、ホッホティーフ・エアポート(ホッホティーフ・グループの子会社。アテネ空港運営権40%保有)は、ギリシャ政府との協議より手を引いたとされる。 (2)エリニコの売却に関する動き 2011年12月8日、ギリシャ公有財産運用基金(TAIPED)(中期財政計画に基づき、民営化推進のために創設された機関。)は、エリニコの売却にあたり、関心表明 (Expression of Interest) の募集を開始した。応募者は過去三年間の年間平均資産額が3億ユーロ以上であること、また、過去10年間に今回と同様の建設プロジェクト(7億ユーロ規模相当)を1件以上行っていることの2点を条件として提示した。ミトロプロス TAIPED 取締役社長は、約55社が応募条件を満たしうると述べた。募集は2012年3月末まで行われることになっており、落札者の最終決定は2012年末が予定されている。
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