ギリシャ経済最新情報 |
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2011年3月 1.概況 2010年のギリシャ経済は60年以来最大の不況に見舞われ、経済成長率は前年比約4.5%減となった。財政緊縮措置の影響により内需は前年比6%程度落ち込み、民間消費も前年比4.5%減と大きな落ち込みを見せた。また、 2010年第2四半期から輸出の回復が見られたものの、2010年第4四半期の経済成長率は6.6%減まで落ち込むなど、経済活動全体の回復には繋がらなかった。本年第1四半期の経済成長率は前年比5.2%減と予想される。雇用は、製造業や建設業など国内主要産業における内需低迷を受け、 2010年12月の失業率は14.8 %、本年1月は15 %まで上昇した。 3月11日、ユーロ圏首脳会合が開催され、ギリシャに関しては、融資の金利引き下げ(100ベーシスポイントまで)と返済期間の延長(3年→7.5 年)が決定されるとともに、ギリシャ政府は2015年までに500億ユーロ規模の民営化(国有資産売却)計画を実施することで合意した。加えて、4月15日、ギリシャ政府は、2015年までに合計260億ユーロの歳入増加を見込んだ中期財政計画を閣議にて発表したが、その中に民営化(国有資産売却)計画が含まれており、2011年~2013年に150億ユーロ、2015年までに500億ユーロの歳入増加を見込こむとともに、政府債務を2015年までに対GDP比20%分削減するとしている。
2.財政 (1) 財政状況 2010年は財政赤字削減に大きな前進が見られた。深刻な不況の中、対GDP比5%程度の財政赤字削減を達成した。 2010年末で対GDP比9.5%程度と見られる財政赤字は、社会保障機関に赤字が生じていたことや公的機関債務の増加により、対GDP比0.5パーセントポイントから1パーセントポイント程度上方修正されるものと見られる。 ギリシャ財務省は、1月、公務員給与や年金等の歳出の大幅削減により、 2010年の政府の財政赤字が前年比 37 %(194億5,400万ユーロ)削減となり、目標の33.2%を上回ったと発表した。2010年の歳出は10.9%減(目標は 9%減)となる一方、歳入は5.5 %増(目標は6%増)にとどまった。 (2) 国債信用状況 (a) 1月15日、米格付け会社フィッチはギリシャ国債を BBB-からBB+ に引き下げ、見通しを「ネガティブ」とした。これにより3大格付け会社によるギリシャ国債の格付けは全て投機的水準(ジャンク級)となった。フィッチは、ギリシャがEU及びIMFによる財政再建プログラムを実施する中、巨額の公的債務が国債償還の負担になっていると指摘した。 (b) 3月7日、米格付け会社ムーディーズは、債務再編の懸念が生じていることを受け、ギリシャ国債の格付けを「 Ba 1」から「 B1 」へ3段階引き下げた。同社は、ギリシャ政府による債務削減計画の実践リスクを指摘するとともに、歳入増加が極めて困難な状況であり、EU及びIMFによる救済措置が終了する2013年以降に債務再編のリスクが高まると指摘した。 3月8日のギリシャ10年国債利回りは12.83 %となり、1988年以来最高値で、昨年10月下旬以降最大の上昇幅となった。 (c) 3月9日、米格付け会社ムーディーズはギリシャ国債格下げに続き、同国6銀行の格下げを行った。同社は、ギリシャ・ナショナル銀行、ユーロ銀行、アルファ銀行及びピレウス銀行格付けをBa1 から Ba3 、ギリシャ農業(ATE)銀行及びアッティカ銀行をBa2 からB1 に引き下げた。 (d)3月29日、 米格付け会社S&Pは、欧州首脳会合(同月25日)の合意事項を受け、ギリシャが 2013年以降に欧州安定化メカニズム(ESM)から融資を受けることで、債務再編を行う可能性があるとの懸念が生じているとして、ギリシャ国債の格付けを「BB+」から「BB-」へ2段階引き下げた。 3.消費者物価指数 ギリシャ統計局によれば、2月の消費者物価指数は年率で前年比4.4%増となり、前月の同5.2%増と比較し予想外の下落となった。商品・サービス別では、本年2月の衣料品や履物類の価格は前年比9%減となる一方、アルコール類やタバコの価格は前年比19.2 %増、交通運賃は前年比5.1%増となった。 4.輸出入 内需低迷は、輸出(商品及びサービス)全体に影響を及ぼすものと見られており 2011年の輸入による収益は6%減( 2010年は4.9%減、2009年は18.6%)と予想される。一方、欧州経済や国際貿易量の回復、輸出関連産業、特に海運業の事業環境改善などにより、輸出(商品及びサービス)の回復が期待され、2011年の輸出による収益は6.4% 増(2010年3.8%増、2009年は20.1%減)と予想される。 ギリシャ輸出協会(PEA)によれば、2011年1月の輸出は13億8千億ユーロとなり、前年比40%増となった。 2010年の石油製品を含む輸出による収益は、162億ユーロ、前年比10.7 %増となり、予想の8.3%増を大きく上回った。 5.主な産業分野 (1) 海運業 ギリシャ中央銀行によれば、ギリシャ人船主の間で中国やインドとのビジネスの機会が増加する中、国際的な貿易活動の回復とともにギリシャの海運業にも回復が見られ、2010年の海運業を含む輸送業の収入は前年比13%増、154億ユーロ(2009年は30%減、135億ユーロ)となった。 ディアマンティディス海事・島嶼・漁業大臣は、 2月下旬中国を訪問し、昨年10月、パパンドレウ首相と温家宝首相がアテネで合意した、中国の造船所に新規発注を行うギリシャ船主への50億米ドル規模の融資実施について張徳江副首相、フー副外務大臣及び中国3大銀行(中国銀行、中国開発銀行及び中国進出口(Ex-Im)銀行)の各頭取等と会談を行った。同3行は、ギリシャ人船主から要求があれば、100億米ドルまで融資増額を検討するとし、最も競争力のある金利とする旨約束した。また、ディアマンティディス大臣はウェン交通副大臣と、外洋航行を行う海運業者に対する融資、海運業全般及び教育の二国間協力などを見込んだ実施計画に署名を行うとともに、ウェイ・コスコ社長とピレウス港におけるコスコ社のプレゼンス強化に関する協議を行った。 (2) 観光業 アテネでの抗議デモやトラック運転手のストライキ活動などの影響を受け、 2010年の観光業は低迷することとなった。ギリシャ統計局によれば、 2010年1月から9月の外国人観光客数は、前年同期比1.5%増となる一方、 2010年全体の外国人観光客による収益は前年比7.6%減、観光業全体(ギリシャ人向け産業も含む)の収益は前年比 8.2%減(2009 年は9.1%減、2008年は3.2%増)となった。観光業の回復は2011年第1四半期以降になるものと見られる。 (3) 金融 2月中旬、ギリシャ・ナショナル銀行(国内最大銀行)は、同行が新たに発行する株式と11対8の比率で交換することでアルファ銀行(国内3位) に対し統合を提案したが、アルファ銀行は株主へ利益をもたらすものではないとして、これを拒否した。ナショナル銀行は二行が統合すれば、資産は2千億ユーロに上り、年間5億5千万~7億7千万ユーロ規模の利益が生まれるものと見られ、また国外での業務の改善とともに国内外の業務費削減が可能としている。 また、3月初め、ユーロ銀行は、本年初となるギリシャ国債を担保とした10億ユーロ規模の銀行間融資について海外銀行4行と合意したと発表した。融資期間は3ヶ月から2年、欧州銀行間取引金利( Euribor)スプレッド幅は150から 200ベーシスポイントの間となっており、融資期間によって決定される。 6.民営化・構造改革 (1) 公共交通機関関連法案の閣議決定 1月12日、ギリシャ政府は、公共交通機関システムの改善にあたり、職員再配置、運賃値上げ、歳出管理の厳格化を含む法案を閣議決定した。ギリシャ政府が財政赤字削減に取り組む中、アテネの都市交通公社は、毎年6億ユーロの赤字を計上しており、大きな負担となっていた。 (2) エリニコ旧空港跡地の開発 ギリシャ政府は、エリニコ旧国際空港跡地の再開発の迅速化に向け、再開発プロジェクトをファーストトラック計画(手続きの迅速化)に組み入れるとしている。パンブキス首相府大臣は、2月22日のカタール訪問時に、これについてカタール当局と協議する意向を示し、ギリシャとカタールが50~70億ユーロ規模の直接投資ついて合意に至ることを望むと述べた。 (3) 専門職の規制緩和 2月22日、専門職における最低料金規定や地理的制限などの規制を撤廃する法案が国会において承認された。同法による規制緩和は、欧州委員会、国際通貨基金(IMF)及び欧州中央銀行(ECB)が 1100億ユーロの支援を行うにあたりギリシャ政府に対して求めていた措置の1つであり、同法によって雇用促進及び外国投資誘致などが見込まれている。 (4) 税制改革法案 1月25日 、ギリシャ政府は、法人税引き下げ及び脱税に関するより厳格な罰則を定めた新税法を発表した。現在24%とされている法人税を20%に引き下げ、配当益に関しては現在の40%から25%の源泉徴収に含めることとしている。同法案においては脱税対策の強化も規定し、金融犯罪専門検察官の導入、脱税に対する実刑判決等罰則の厳格化、医師や歯科医、獣医、弁護士、建築士、エンジニア、会計士や企業経営者等の個人事業主に対する特別監査基準を設定するとしている。 (5) 欧州委員会によるギリシャ航空会社の合併不許可 1月26日、欧州委員会は、ギリシャの二大航空会社であるエージアン航空とオリンピック航空の合併について、市場の寡占化を理由に認められない旨判断した。 2月2日、オリンピック航空は、同決定に対し異議を申し立てる旨発表した。 (6) 保健・医療制度改革 2月初旬、医療制度改革法案は、医師によるデモが議会前で行われる中、全野党の反対にもかかわらず、賛成多数で可決された。右改革法案により、3月1日から医療サービスのオンライン化、 6月30日から病院の統廃合及び病院施設の新運用制度が開始される。 (7) ギリシャ政府による民営化計画 3月22日、パパコンスタンティヌ財務大臣は、EUから要請を受けている計500億ユーロ規模の民営化(国有資産売却)計画に関し、今夏にも民営化による最初の収入が見込めるかもしれないとし、計画第一期目として今後3年間に150 億ユーロ規模の国有資産売却を予定していると述べた。第一期案件として、くじ会社の民営化、アテネ国際空港(AIA )の運営権の更なる譲渡及び天然ガス公社(DEPA)の政府所有株売却等が検討される見込み。 7.その他関連情報 (1) ピレウス銀行の増資状況 1月3日、ピレウス銀行頭取は、臨時株主総会で承認された同行の8億700万ユーロ増資にあたり、既存株主に保有株5株につき新株12株を1株当たり1ユーロで割り当てる旨発表した。 (2) フォリフォリ社による中国でのビジネス拡大 クツォリツォス・フォリフォリ副社長によれば、同社は本年、中国に新規店舗35店(2010年は25店オープン)をオープンする予定であり、中国でのビジネスを優先している。同社は世界24ヶ国で事業を行う一方、ギリシャ国内の消費落ち込みや今般の不況により、国内店舗の削減を検討している。 (3) トロイカ代表団によるギリシャ国有資産売却要求 2月、ギリシャ訪問中の欧州委員会、 IMF及びECB(トロイカ)代表団は、2週間に渡る調査を終え、ギリシャの公的債務の削減にあたり、2015年までに500億ユーロ規模の国有資産売却が必要であるとし、売却による歳入を2013年までに70億ユーロとする当初計画から増幅するよう、売却資産の拡大を要求した。 (4) ブルガス・アレクサンドロポリ間石油パイプラインの建設状況 ギリシャの主要エネルギー計画となっているブルガス・アレクサンドロポリ間の石油パイプライン建設計画に関し、ロシアのメディアは、各関連業者(トランスネフチ社、ロスネフチ社及びガスプロム・ネフチ社(それぞれロシア企業))が同計画を中止すると報道した。トランスネフチ社は、同計画を破棄する予定はないとして右報道否定しつつも、建設費用を最小限に抑えるとし、ギリシャ及びブルガリアによる出資が大幅に削減されていると述べた。 (5) ギリシャ商業連合による対日貿易強化の呼びかけ ギリシャ商業連合は、当地企業関係者に対し現在困難な状況にある日本との貿易強化を呼びかけ、日本からの食品輸入の促進を表明した。 (6)ギリシャ企業と中国企業の合意締結 ギリシャ電力公社(PPC)は、ギリシャにおける風力発電所の開発や風力発電機設置にあたっての共同事業を目的とし、中国のシノヴェル・ウインド・グループ(大手風力発電機メーカーで、世界シェア第2位)と戦略的パートナーシップを締結した。また、アラピス社(注:製薬保健分野を扱う企業グループで、南東欧に進出している。)は、中国の製薬会社である石家荘製薬グループと法的拘束力のない(nonbinding)メモランダムに署名を行った。
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