ギリシャ経済最新情 |
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2010年12月 1.概況 3度目の融資(90億ユーロ)に先立ち、11月にギリシャを来訪したトロイカ(欧州委員会(EC)、欧州中央銀行(ECB)及び国際金融基金(IMF))代表団は、ギリシャの安定プログラムの実施状況を順調であるとし、ギリシャとの修正覚書に署名した。これにより、IMFから12月に25億ユーロが融資され、ユーロ加盟国から財務大臣会合での承認後1月前半に65億ユーロが融資される。ただし、トロイカ代表団は公的資産の民営化、専門職制度の自由化、労働協約の例外等、健康関連費の大幅削減、不採算公営企業の大幅改革などを指摘している。 2010年前半は投資や民間消費が大幅に落ち込んだ上、市場圧力やスプレッドの拡大は企業の資金調達を困難にさせる要因となった。公務員給与削減、税率引き上げ、可処分所得の低下や歳出削減などの緊縮措置実施は短期的に経済成長の鈍化を導き、2011年予算案では2010年経済成長率を前年比-4.2%、2011年も引き続き-3%程度と想定しているが、2011年下半期から2012年にかけて成長の回復が期待される。 経済活動の悪化は、小売業、販売業、建設業等を中心に雇用の低下を招き、企業の採用凍結や公務員の短期雇用契約削減等により失業率が上昇している。 2011年予算案では、2011年失業率を14.6%、2012年14.8%、2013 年14.3%と予測されている。 2010年には一般貯蓄率が増加する一方、雇用悪化と賃金低下は可処分所得を低下させ、民間消費は2010年前年比約-4 %、2011年は-4.5%と予想される。
2.財政 (1) 統計再修正 EU統計局は2009年10月、2010年4月に引き続き、同年11月に2006年から2009年までの修正統計を発表した。当該発表によれば、主に公営企業債務を中央政府分へ算入し、社会保障基金や地方自治体の実体を反映したことにより、2009年ギリシャ財政赤字は対GDP比13.6%から15.4%(361億5千万ユーロ)へ修正された。また、2009 年政府債務についても、公営企業財務状況(対GDP比7.75 %、182億4000万ユーロ)、市場外スワップ取引(対 GDP比2.3%、55億3300万ユーロ)等を算入し、対GDP比115.4%から126.8%(2980億3200万ユーロ)へ修正された。 EU秋季経済予測では、2010年政府債務を140.2%、2011年150.2%と予測している。 (2) 財政状況 2010年1~11月の財政赤字は、186億2000万ユーロ(前年同期は256億3400万ユーロ)、前年同期比27.4%減(通年目標は33.2%)となった。同期歳出は前年比6.5%減となった一方、VAT引き上げ、脱税防止強化、会計検査措置等により、純歳入は前年比4.8%増となった。 (3) 政府短期債券発行 統計の再修正やトロイカとのメモランダムの実施の遅れが見られる中、26週物政府短期債券の発行が2010年11 月9日に行われ、平均利率は10月の4.54% から若干上昇して4.82%、倍率は10月の4.22倍から5.15倍となり、最終的に4億8000万ユーロ調達に成功した。同月16日には13周物政府短期債券も発行し、利回り4.1%、倍率 4.98でこちらも最終的に4億8000万ユーロを調達した。政府短期債権は2010年9月以降、四半期に一度の発行から変更して毎月発行されている。 (4) 融資返済期限延長計画 また、財務大臣は11月末、トロイカによる1100億ユーロ融資の返済期限延長をEUと検討する旨発表した。当該延長はユーロ16カ国での議会承認が必要になると想定される。現在トロイカからの融資に関する返済猶予期間は約3年とされているが、猶予期間4年に続く7年の延長が想定され、この期間の金利は従来の5.5%程度から5.8%程度になると考えられる。 (5) 2011年予算成立 12月23日は2011年予算が議会で可決された。当該予算では2010年対GDP比財政赤字が9.4%になることが予想される中、2011年の目標を7.4%としている。当該目標に向けて、2011年予算は、付加価値税(VAT) の基本課税率を11%から13%へ、低課税率5.5%から6.5%へ引き上げ、低課税商品に対する課税分類変更、ゲーム業ライセンス販売、不正建築物への課税、年金額凍結、地方政府支出や不採算公営企業の運営費・人件費、医療関係費、国防費等削減を含んでいる。 2011年の経済成長率は -3%( 当初予測は-2.6%)と予測しており、経済活性化のため、一部法人税を24%から20%へ、観光産業にかかるVATを11%から6.5%へ引き下げる。また、医薬品についても現行の11%から6.5%へVATを引き下げる。
3.消費者物価指数 2010年は3月及び7月に相次いで引き上げられたVATや煙草、アルコール、燃料に対する税率引上げによりインフレ率が上昇し、同年1月から10月までの平均で前年同期比4.2%増となった。ただし、9月の5.7%をピークに、10月は 5.2%、11月は4.9%とインフレ率は低下している。 2011年予算案では2010年は4.6%、2011年2.2%、2012 年0.5%、2013年0.7%と予測されている。 4.投資 2010年9月までの投資は前年比-16.5%となった。大幅減少の主な理由の一つとして、EU社会構造基金との共同融資となる公共投資予算の実施が遅れており、2010年を通した予算30億ユーロに比して13億ユーロ以下に止まっている。 また、2008 年に官民パートナーシップ案件として57億ユーロ相当の52件が認められたが、新政権発足後、2010 年6月に約半分の案件にあたる21億ユーロ相当のプロジェクトが開始する旨発表された。また、旧投資促進法に基づく投資案件約7000件、14億ユーロ相当が認定されているが、同法の効力が2010年1月に消滅後、新投資促進法の導入が遅れている。 5.輸出入 内需の低下とともに輸入低下も生じており、2010年1~9月までに前年同期比-10.5%の低下がみられ、 2010年10月は前年比-16.2%となった。一方、輸出は回復の兆しが見え始めており、2010年1~9月までは前年同期比-0.6% となったが、2010年10月は前年比24.1%増となり、2011年及び2012年は国内人件費の低下や外国経済の回復により更なる回復が予想される。 6.主な産業分野 (1) 海運業 2010年1~9月の海運収入は前年同期比15.2%増で、 2009年同期の-31.3%から大きく戻した一方、支出も 10.7%と増加して純収益は10.7%増となった。前年比-34.4%、64.8憶ユーロに止まった2009年の海運純収益に対して、2010年は一定程度の増加が見込まれる。 また、一部報道では、2010年1~10月のギリシャ人船主による新規船舶購入総額は60億米ドルに上り、中国及び韓国への新造船発注は前年同期の36隻を大きく上回る231隻(総トン数2580万トン)となった旨の船舶仲介業者の発言が報じられている。 (2) 観光業 2010年第3四半期の観光収入は前年同期比-7.5%減(前期比61.3 %増)となった。2010年上半期の中国人観光客数は9264人、前年同期比542%増(2009年下半期は1442人)と顕著なものとなった。アジアからの観光客は全体の5.7%を占めるが、2010年は前年比3.1%増となった。一方、英国人観光客が前年同期比-5.5% 、ドイツ人観光客-11%と減少する中、ロシア人観光客は約12万人、67.3%増となった。 2010年上半期のギリシャ訪問者数は 465万件、前年同期比-5.3%減となった。 (3) 金融 ギリシャの経済情勢悪化や新自己資本規制の導入を受け、ギリシャ最大銀行のナショナルバンクは、10月上旬、18 億ユーロ分の株主割当増資を実施し、1.8倍の応募となった。また、同行はトルコのファイナンス銀行の保有株20% を売却予定である。 10月中旬には、ユーロバンクが、ギリシャ財政危機発生後初の銀行間貸出市場に復帰した国内銀行となり、ギリシャ国債を担保とした銀行間貸出により3億ユーロ調達し、外国国債を担保とし5億ユーロ調達した。 また、ピレウス銀行は10月末、2011年1月に8億ユーロ規模の株主割当増資、同年夏季に2億5000万ユーロ規模の転換社債発行による資金調達計画を発表した。 ギリシャ中央銀行の発表によると、ギリシャ金融機関によるECBからの資金調達額は、8月 959 億ユーロ、 9月 943 億ユーロ、 10月は924億ユーロとなり3カ月連続で低下しており、 ECBへの依存度は低下しつつある。 (4) その他 ギリシャの製造業の26%程度を占める食品、飲料品、タバコの製造に関しては、2009年の若干の低下(各-3.3%、 -5.8%、-2.7%)に比して、2010年1~9月は各-4.3%、-8.0%、-15.5%となった。飲料品及び煙草については、断続的な課税強化が大きく影響したものと考えられる。その他の重要産業である化学製品、製薬、基礎金属、建築用金属製品等の製造は各0.3%、4.8%、9.8%、0.3%と若干の上昇を示したのに対し、自動車関連製品及び電気製品についてはそれぞれ-0.3%、-0.9%となった。 2010年1~10月の新車登録台数は2009年の前年同期比-21.2%に引き続き、-33.9%となった。同期の自動車輸入額も2009年の23億4000万ユーロに比して、18億ユーロに減少している(2008年52億ユーロ、2009年33億ユーロ)。新車登録台数は、2007年31万5800、2008年29万3800、2009年24万2600となっている。 7.民営化・構造改革 (1) 統一地方選挙 ギリシャ首相が統一地方選挙の結果次第では早期の総選挙の可能性を示唆し、ギリシャ経済への悪影響が懸念されたが、11月7日及び14日の地方選挙の結果を受け、近々の総選挙実施は回避された。 (2) 単一支払機関の運用開始 11月26日から、政府は国家機関職員への支払いを統一的に管理する単一支払機関の運用を開始した。現在管理する職員給与は全体の三分の一程度であるが、将来的には全国家機関の職員への支払いの一括管理を行う。 (3) ギリシャ政府による輸出促進戦略発表 12月8日、地方開発・競争政策省は、ギリシャの輸出促進戦略を発表した。同戦略は、現在対GDP比8.7%の輸出収益を2012年に10%、2014年には16%まで高めることを目標としている。また、"Go to Market" (G2M)と呼ばれる基金創設を予定し、2011年第1四半期には開始する。輸出・観光業者が使用する統一的なロゴも作成することで品質確保に努め、輸出支援機関であるギリシャ対外貿易機関(HEPO)の再編も予定されている。 (4) 労働関連及び公営企業(DEKO) 運営関連法の成立 12月14日、議会は労働関連法案及び公営企業(DEKO)の運営に関する法律を可決した。同法では財務状況に問題が生じている企業に対し、労働協約の例外及び個別的賃金システムの導入が可能となる。従来、労働組合ごとに最低賃金等雇用契約規定が設定されていたが、同法により企業が個人との間で自由に雇用契約を結ぶことが可能となる。また、公営企業に関して賃金月4000ユーロを最高額とし、1800ユーロ以上の職員に対し10%の給与削減、残業手当等は本棒の10%を上限とした。また、公共交通機関の乗車券を30~50%の値上げも検討されている。 (5) 専門職制度自由化法案 一部報道によると、ギリシャ政府は2011年初旬に専門職制度自由化法案を発表する。専門職制度自由化法案は約 150種の専門職への参入緩和措置等を行うもので、今後6ヶ月以内に弁護士、薬剤師、公証人、会計士、建築士、エンジニア、歯科医に対し導入開始予定であり、同専門職には不動産業者、パン製造業者、美容師、新聞販売代理店、電気技師、タクシー所有者、眼科医等も含まれる。 EU及びIMFは、ギリシャの競争力強化及び成長促進対策として、専門職制度の自由化を強く求めている。 (6) 航空会社統合計画への懸念 エージアン航空とオリンピック航空の合併に関し、新会社による国内航空市場独占に対するEU独占禁止法上の問題が懸念されている。エージアン航空主要株主のヴァシラキス・グループとオリンピック航空主要株主のマーフィン・インベストメント・グループ(MIG)は、2010年2月に合併計画を発表したが、EUによる最終判断は2011年1月中旬に発表される見込み。 8.その他関連情報 (1) ピレウス銀行によるギリシャ農業銀行等の買収提案撤回 ピレウス銀行は、7月、ギリシャ政府に対しギリシャ農業(ATE) 銀行及びギリシャ郵便銀行買収(7億100万ユーロ)を提案して2ヵ月半が経過したが、適切な判断が速やかに審理されないとして同提案を撤回した。 (2) 中国首相のギリシャ訪問 10月2日、中国首相はギリシャを訪問し、両国首相は会談後、中国企業によるギリシャ投資促進のための11の商業協力協定を含む13の二国間合意に署名した。中国首相は、中国によるギリシャ国債購入の継続、二国間貿易を今後5年間で二倍の80億ドルまで拡大、中国新造船購入を行うギリシャ船主融資のための50億ドル規模の中国ギリシャ開発基金設立、中国製品の欧州向け輸出のハブ港としてのピレウス港投資増強を表明した。 (3) ギリシャの私立医療グループによるトルコ病院買収 10月2日、イギア医療サービス・グループは、トルコの3病院の100%保有を目指し(現在50%保有)、570万ユーロでの買収予定を発表した。 イギア(主要株主はMIG)はアルバニア及びキプロスにも進出しているが、今後イスタンブールの病院の買収可能性も示唆している。 (4) ギリシャ建設会社「メッカ」のシリア投資 ギリシャの発電所建設会社メッカは、イタリアのアンサルド・エネルジア社とともにシリア北東部における6億7800万ユーロ規模の火力発電所建設契約に署名した。メッカは90%が海外受注であり、受注総額は今次発電所建設契約により24億ユーロに上る。 (5) ギリシャ電力公社とフランス EDF エナジー・ヌーヴェル社の協力署名 電力公社(PPC)は、仏EDFエナジー・ヌーヴェル社とギリシャにおける再生可能エネルギープロジェクトの共同開発に関するメモランダムに署名を行った。 PPCは声明において、北部フロリナ地方の風力発電所で最大200MW 、クレタ島の風力及び水力発電所で90MWの発電を検討している旨述べている。 PPCは再生可能エネルギーに関し2015年までに20億ユーロ規模の投資を予定している。 (6) 中央銀行中間報告 10月26日に中央銀行が議会へ提出した中間報告において、現在の経済低迷は2011年も続くことが予想されている。経済低迷の深刻化を防ぎ、早急な回復のためには、現在の需要や競争力低下、信用収縮、企業の税負担の緩和が必要である旨指摘し、輸出産業強化に言及している。また、同報告は、歳入増加のための課税強化の余地はなく、今後は課税範囲の拡大や脱税対策で対応すべきであり、財政再建は無駄な歳出の削減や徴税強化を中心に考えるべきであるとした。更に、2018年までに段階的に導入されるバーゼルIIIに関連して、ギリシャの銀行部門も合併や統合が必要である旨述べている。
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