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      ギリシャ経済最新情報

2010年9月

1.概況
2010年8月にギリシャに2週間滞在した欧州委員会(EC)、欧州中央銀行(ECB)及び国際通貨基金(IMF)の調査団は、前年比-39.4%となった7月までの財政赤字削減策、年金や労働市場、地方制度などの構造改革が軌道に乗っている旨の評価を与えている。ただ、増税や給与削減による国内消費の減少、独自の通貨調整が生じないことに伴う国際競争力の低下等により、ギリシャの債務再編懸念は完全に払拭されてはいない。

ギリシャ政府はEC、ECB及びIMF(トロイカ)と5月に合意された経済金融政策及びMOUの更新版を発表するとともに、2010年5月の200 億ユーロの融資に続き、9月13日及び14 日に第2 回融資90億ユーロ(ユーロ加盟国から65億ユーロ、IMFから25億ユーロ)を受けた。12月にも90億ユーロの融資が予定されており、年合計380億ユーロの融資となる。また、従来四半期毎に発行されてきた6ヶ月物及び3ヶ月物政府短期債権について、9月以降毎月発行する旨発表している。
2010年第2四半期のGDP成長率は前年同期比3.7%減となった。インフレ率については、VATや物品税引上げにより 7月・8月とも5.5%まで上昇しているが、内需低下が見られる中、年全体では5%以下に落ち着くものと見られている。


2.財政
公務員給与引下げや税制見直し、二度にわたる付加価値税(VAT)引上げ等により、2010年上半期における財政赤字削減は、年目標の-39.5%に対して、前年同期比で45.4%と成功する一方、失業率の上昇や経済成長の低下、 歳入不足が生じ、8月までの財政赤字削減は-32.2%となる144 億9000万ユーロ(前年同期:213億8200万ユーロ)に留まった。特に歳入不足が表面化しており、年目標が前年比15.6%増にもかかわらず、2010年上半期歳入は 5.9%増、8月までの歳入は3.3%増となっている。

第75回テッサロニキ国際貿易展で実施された首相による経済政策演説では、歳入増加や経済活性化に向けたエネルギー市場の自由化、脱税対策強化、専門職制度自由化に加え、投資促進の一環として、当初2014年まで毎年1%削減が予定されていた法人税率引下計画を 2011 年から一気に20%まで引き下げる計画を発表している(2010年 24%)。
2010年9月には、8月に引き続き、トロイカによる調査団がアテネを再訪し、2011年予算案及び歳入増加策、OSE等民営化計画、銀行強化策、専門職制度の自由化などの協議が実施された。

3.消費
2010年第2四半期の政府消費は前年同期比-8.4%、民間消費は-4.2% 、最終消費全体は-5.1%となった。給与削減やVATや物品税の引上げ、年金改革などの影響を受けたものと考えられる。今後も民間消費の減少は続くとともに、財政赤字削減目標とされる2013年までは政府投資の減少も想定される。

4.輸出入
2010年第2四半期の輸入は-13.5% 、輸出は-5.0%となった。国内需要低下による輸入減少が生じており、2009 年の-14.1%に続いて2010年も低下が予想される。一方で、欧州経済や国際経済の回復による輸出増加が見込まれ、海運業への好影響も期待される。

5.雇用
2010年5月には12% まで上昇したギリシャの失業率は、観光シーズン開始による季節的な雇用増加の影響もあり、 6月は11.6%と若干低下した。しかしながら、依然としてギリシャの失業率はユーロ圏16カ国中、スペイン、スロバキア、アイルランドに次いで4番目に高い水準となっている。

6.主な産業分野

(1) 建築業
2006年以降低下し続けている住宅建築認可(㎡)は、2010年1~5月においても前年同期比-22.4% となった。この傾向は2010年の住宅投資に影響すると見られている。また、住宅価格についても、2010年第2四半期は前年同期比-5.7%で、第一四半期の1.8%減よりも大きい下げ幅となった。

その他建築分野に関しては、公共投資予算の削減により政府投資低下が予想される一方、EUからの支援枠組みの利用増加が期待される。ただ、2009-10年でEUから90億ユーロ以上の支援が予定されているにもかかわらず、 2009年は20億ユーロの利用に留まり、2010年は24億ユーロの利用が予想されている。

(2)海運業
2008年の99億ユーロから2009年には64.8億ユーロまで低下した海運収益は、2010年上半期において前年同期比9.2%増となった。
また、ギリシャ中央銀行の発表を基にした報道によると、世界の20%の船舶を保有するギリシャ人船主の2010年上半期収益は前年同期の67億ユーロから77 億ユーロへ増加し、海運業界の一部関係者は中国での需要増加とロシアの穀物輸出禁止措置による南アメリカ等他の市場から穀物を輸送する必要性により、海運需要が増加するものと期待されている。

(3)観光業
2010年上半期の観光収入が-11.9%となる一方、2010年7月までの主要空港を利用した外国人観光客数は前年比-0.2%程度となり、7月のみに関しては前年比2.7%と増加した。
各種報道では、2010年観光客数は前年から横ばいの1,500万人程度と予測されているものの、経済情勢が悪化する中、観光客向けへの特別割引の実施、観光客の消費抑制などにより、観光関連の消費は落ち込むと見られている。


(4)金融
2010年前半においては、ギリシャの金融機関の預金の海外流出も見受けられ、民間部門における預金額は6月末時点で前年比-8.8%(210億ユーロ相当の減少)となった。一部報道では、近いうちにギリシャの銀行の不良債権額が10%以上増加し、貸出総額2,220億ユーロの内220~260億ユーロに上る可能性も指摘されている。
また、ギリシャ国債格下げに伴い、ギリシャの銀行の流動性にも困難が生じていることから、ECBは格付けに関係なく担保としてのギリシャ国債引受を継続し、政府も93億ユーロしか活用されなかった2009年に実施した銀行支援策(280億ユーロ)を継続する。更に、ユーロ加盟国及び IMF から融資される1100億ユーロのうち100億ユーロが、ギリシャの銀行が資本関係の問題発生時に活用するため金融安定基金として創設される。
財務大臣は、実体経済後押しのための融資拡大を目指し、銀行が信用拡大計画を提出することを条件に、銀行の貸出に対して250億ユーロ分の政府保証を付ける旨発表する一方、ギリシャ政府は、国内銀行の統合に関してラザード投資銀行、HSBC及びドイツ銀行をアドバイザーとして指定しており、首相も強固な国営銀行一行と民間銀行二・三行に集約すべきと発言した旨報道されている。

7.欧州ストレステストの結果
欧州銀行監督委員会(CEBS)及びEU各国金融監督当局が実施した欧州銀行セクターに対するストレステストの結果が 7月23日に公表された。ソブリンショックも反映させた「停滞シナリオ」におけるTier1比率6%を基準として判定した結果、91行中7行について資本不足が指摘された。ギリシャにおいては、 ナショナル銀行、ユーロ銀行、アルファ銀行、ピレウス銀行、農業銀行及び郵便銀行が当該ストレステストに参加しており、これらの銀行はギリシャ金融セクター資産の90%以上(外国銀行を除く)を占めている。




Tier1 (%)

郵便銀行
アルファ
バンク
ユーロ
バンク

NBG
ピレウス
バンク  
農業銀行 (ATE
バンク )
2009年時点
17.1
11.6
11.2  
11.3
9.1
8.4
標準シナリオ( 2011 年末)
17.0
12.3
11.7
11.7
10.9
10.7 
停滞シナリオ( 2011 年末)
15.0
10.9
10.2
9.6
8.3
8.9
ソブリンショックを含む停滞シナリオ(2011年末)
10.1
8.22
8.17
7.40
6.00
4.36

ギリシャ中央銀行及び財務省の発表によると、農業銀行のみTier1比率6%を下回る結果となったが、停滞シナリオの現実化は想定しがたいものであり、更にギリシャの停滞シナリオにおいては、最近の国際機関等の予測より遙かに厳しい経済低迷、現在よりかなり高い利回りが想定されている。
また、ギリシャ中央銀行は、国内銀行への独自のストレステストの実施を当初予定の9月から年末へ延期する旨発表している。


8.民営化・構造改革
(1)年金制度
7月9日及び15日に年金制度改革が議会を通過した。主な内容は以下のとおり。
○民間部門に関する年金改革

•  年金基金を3つに統合

•  2013年12月までに法定退職年齢65歳を導入

•  2011年までに早期退職最低年齢60歳へ引上げ

•  2015年までに年金満額給付退職のための最短年金支払期間を 35-37年から40年へ引上げ

•  支払期間40年以下の60-65 歳の退職者に対して年金給付毎年 6% 削減

•  年平均増加率を2%から1.2%へ削減

•  ボーナス(クリスマス・イースター・夏季)分の削除(年総額14%の削減)

•  年金算出基準額を最終5年分から生涯収入全体へ拡張

•  2011年~13年の間年金凍結

•  1400ユーロ以上の年金給付に対して毎月課税することで低年金者へ再配分

○公的部門に関する年金改革

•  2010年から2060年の期間、公的部門に対する年金支出増加はGDP比2.5%を上限

•  公務員の年金制度を民間部門と均一化し、全公的部門の扱いを平等化

•  2013年12月までに公的部門の男女双方に対し、法廷退職年齢65歳を導入


(2)労働市場改革
年金改革と同時に、全体的な退職手当の削減、大企業に対する集団解雇基準緩和、就職試用期間の一年への拡大、若年層及び失業者に対する最低賃金レベルの導入等を含む労働市場改革も議会を通過した。また、関係団体との間で2010年の賃金凍結及び2012年まで年間上昇率1%以下で合意した。

(3)地方自治体改革
2010年11月に新たな地方自治制度(カリクラティス法)のもとで統一地方選挙が実施される。当該制度においては、 1034市町村を347程度に統合し、57あった県を廃止して13州の知事を公選制とし、首長の任期を4年から5年に延長することで欧州議会議員選挙と同時に実施するとともに、中央政府から州への大幅な権限委譲を行う。

(4)ギリシャ国営鉄道の動向  
一部報道において、国営鉄道(OSE)は2011 年までに職員の3人に1人を解雇する必要性が指摘されている。インフラ整備・運輸・ネットワーク省においては、OSEの職員解雇を否定し、他の公的機関による受入等の代替策の他、赤字ルートの削減、格安及び無料チケットの廃止等が検討されている旨報道された。

(5)陸運業自由化法成立
9月22日、トラック運転手が議会前に座り込みを実施する中、陸運業自由化法を可決した。従来トラック運送ライセンスは、親族への継承又は3~3.5万ユーロ程度で取引等されていたが、同法により低価発行されることで、陸運業への新規参入促進及び輸送コストの大幅削減が期待される。


9.その他関連情報 
(1)ウィンド・ヘラスの債務凍結

携帯電話事業会社で、エジプト資本家による経営される国内第三位の携帯電話事業会社であるウィンド・ヘラス社は7 月1日、11月5日まで債務を凍結する旨債権者と合意したと発表した。これにより、同社は4,050万ユーロの債務返済を延期し、キャッシュフロー改善及び債務再編の機会を得ることになった。

(2)保護地域や森林地域に関する単一地図作成
環境・エネルギー・気候変動省は、森林保護を目的とした不法建築防止法案の議会提出を発表しており、同法案には国有林の境界線を含む広範囲の地図が描写される。第75回テッサロニキ国際貿易展で実施された首相による経済政策演説においても、保護地域や森林地域を明記した単一地図の作成実施に言及されている。

 

(3)政府による観光客への損害補償
9月、観光客への損害補償に関する法律が議会で可決された。同法はストライキ発生や自然災害により足止めされた観光客に対し、損害補償としてギリシャ政府より一日50ユーロ、最長2日間支給する。

(4)内閣改造

9月8日、パパンドレウ首相は内閣改造を発表した。本内閣改造の一番の目的は、経済・財政政策の強化と考えられており、パパコンスタンティヌ財務大臣は留任し、フリソホイディス地方開発・競争政策大臣は、経済復興・成長政策の牽引という事実上の経済担当大臣としての任務を負う。

(5)再生可能エネルギープロジェクトの承認
9月13日、エネルギー管理機関(RAE)は、再生可能エネルギーに関する主要プロジェクト(合計21億ユーロ規模)を承認した旨発表した。今回承認されたのは,ロカス社によるエーゲ海北部沿岸地域の風力発電所建設(出力電力 700MW) 、フランス電力公社(Edf)及びサン・レイ社(マルタ)によるクレタ島発電所建設(それぞれ100MW及び 5MW)、並びにエラクター社によるレスボス島発電所建設(35MW)となっている。

(6) IMF事務所の設立計画  
ギリシャの歳入増加及び歳出削減状況の確認のため、IMFはアテネに2名の常駐事務所の設立を決定した旨報道されている。当該報道によると、IMFは税制及び歳出削減に関する専門家を各一名アテネに常駐させ、構造改革に関してギリシャ財務省と密に連絡を取り、要すればアドバイスを行う。

(7)ギリシャ-カタール間における地中海投資に関するメモランダム
9月23日、ギリシャ首相とカタール首長は、ニューヨークにて、地中海諸国への投資に向けたメモランダムに署名した。当該メモランダムには、カタール投資当局によるギリシャの観光、不動産、交通、インフラ及びエネルギー分野において投資を行う可能性が挙げられている。

※各種報道・公表資料を参照
 
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