感染症広域情報の発出 「ゴールデンウィークに海外へ渡航される皆様へ」

 

  海外で注意すべき感染症について

ゴールデンウィークには,多くの方が海外へ渡航される時期ですが、海外滞在中に感染症にかかることなく、安全で快適な旅行となるよう、海外で注意すべき感染症及びその予防対策について、以下のとおりお知らせいたします。

・海外で感染症にかからないようにするためには、感染症に対する正しい知識と予防方法を身につけることが重要です。

・渡航先や渡航先での行動によって異なりますが、最も感染の可能性が高いのは、食べ物や水を介した消化器系の感染症です。
 (別表:海外で注意しなければならない感染症)
 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/travel/dl/2013gw_00.pdf

・日本で発生していないような、動物や蚊・ダニなどが媒介する感染症が海外で流行している地域も多く、注意が必要です。また、WHOが排除又は根絶を目指している麻疹(はしか)及びポリオは、日本での感染者が減少傾向又は発生が認められていませんが、諸外国では未だに流行しています。

・海外渡航を予定される方は、渡航先での感染症の発生状況に関する情報を入手し、予防接種が受けられる感染症については、余裕をもって相談しておくなど、適切な感染予防に心がけてください。  
FORTH/厚生労働省検疫所「予防接種機関の探し方」
http://www.forth.go.jp/useful/vaccination02.html

海外に渡航する機会に、これまで受けた予防接種について確認しましょう。
昨年から、首都圏や都市部を中心に風しんの流行が続いています。国内の感染症を海外に持ち出さない、または海外の感染症を国内に持ち込まないために、国内に流行がある疾患に対するワクチンで未接種のものがあれば、予防接種を検討しましょう。

厚生労働省「風しんについて」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/

・日本国内の空港や港の検疫所では渡航者の方を対象に健康相談を行っています。帰国時に発熱や下痢、具合が悪いなど、体調に不安がある場合は、検疫所係官に相談してください。
感染症には潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が、数日から1週間以上と長いものもあり、帰国後しばらくしてから具合が悪くなることがあります。その際は、早急に医療機関を受診し、渡航先、滞在期間、現地での飲食状況、渡航先での行動、家畜や動物との接触の有無、ワクチン接種歴などについて必ず伝えてください。


1.蚊やダニなど節足動物が媒介する感染症  
渡航先(国・地域)や渡航先での活動によって、感染する可能性のある感染症は大きく 異なりますが、世界的に蚊を媒介した感染症が多く報告されています。特に熱帯・亜熱帯 地域ではマラリア、デング熱、チクングニア熱などに注意が必要です。
蚊に刺されたり、マダニに咬まれたりすることなどによる感染症を防止するには、
●野外活動の際には、長袖・長ズボンを着用する、素足でのサンダル履き等は避けるなど、肌の露出を避けた服装を心がける
●虫除け剤を使用する
などの注意をしましょう。

 

(1) マラリア  
毎年世界中で約2億人の患者が発生し、65万人以上の死亡者がいると報告されています。2012年は、海外で感染して帰国された方(輸入症例)が73例報告されており、2013年は3月現在11例が報告されています。

○発生地域:アジア、中南米、アフリカなど熱帯・亜熱帯地域に広く分布。2011年、2012年にギリシャで発生が報告された。
○感染経路:マラリア原虫を保有した蚊(ハマダラカ)に吸血された際に感染する。ハマダラカは、夜間に出没する傾向がある。都市部での感染リスクは、アフリカやインド亜大陸を除き減少している。
○主な症状:マラリア原虫の種類により7日以上の潜伏期ののち、寒け、発熱、息苦しさ、結膜充血、嘔吐、頭痛、筋肉痛など。迅速かつ適切に対処しなければ重症化し、死亡する危険がある。
○感染予防:長袖,長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤や蚊帳を使用する等により、蚊に刺されないよう注意する。特に、夜間の屋外での飲食時や外出時に注意する。 2週間以上流行地に滞在し野外作業等に従事する場合には、抗マラリア薬の予防内服を行うことが望ましいとされている。

○参考情報:
FORTH/厚生労働省検疫所「マラリアに注意しましょう!」
http://www.forth.go.jp/useful/malaria.html

国立感染症研究所「マラリアとは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/malaria.html

(2) デング熱、デング出血熱 

世界中で25億人が感染するリスクがあり、毎年約5,000万人の患者が発生していると考えられています。  
日本では、輸入症例が毎年約100例報告されています。なかでも、インド、フィリピン、インドネシアでの感染事例が増加していますので注意が必要です。2012年は、輸入症例が220例報告されており、2013年は、3月末現在、30例が報告されています。

○発生地域:アジア、中南米、アフリカなど、熱帯・亜熱帯地域に広く分布。
○感染経路:ウイルスを保有した蚊に吸血された際に感染する。媒介蚊は日中、都市部の建物内外に生息するヤブカ類である。
○主な症状: 2~15日(多くは3~7日)の潜伏期ののち、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹。デング熱患者の一部は重症化して、出血傾向を伴うデング出血熱を発症することがある。
○感染予防:長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤や蚊帳の使用等により、屋内及び屋外において蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

○参考情報:
FORTH/厚生労働省検疫所「デング熱」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name33.html

国立感染症研究所「デング熱とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ta/dengue.html

国立感染症研究所ウイルス第一部第2室「デングウイルス感染症情報」
http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/dengue.htm

(3) チクングニア熱 

アフリカ、東南アジア、南アジアの国々で流行しており、2006年にはインドで約140万人の感染者が報告されています。  
日本では、2012年は輸入症例が9例報告されており、2013年は、3月現在、4例報告されています。

○発生地域:アフリカ、東南アジア(フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシア、シンガポールなど)、インド、パキスタン、インド洋島嶼国(スリランカ、モルディブなど)マダガスカル。 2007年にはイタリア、2010年にはフランスでも流行。
○感染経路:ウイルスを保有したヤブカ類に刺された際に感染する。
○主な症状: 2~12日(通常4日~ 8日)の潜伏期ののち、突然の発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹。関節痛は急性症状消失後も数か月続くことが多い。
○感染予防:長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤や蚊帳の使用等により、屋内のみならず屋外でも蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

○参考情報:
FORTH/厚生労働省検疫所「チクングニア熱」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name32.html

国立感染症研究所「チクングニア熱とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ta/chikungunya.html

国立感染症研究所ウイルス第一部第2室「チクングニア熱」
http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/Aiphavirus/Chikungunyahtml.htm

(4) ウエストナイル熱・脳炎  
ウエストナイルウイルスが原因の熱性感染症です。このウイルスは、鳥と蚊の間で維持されている感染症です。北米地域だけでも例年数千人の感染者が報告されています。 米国での流行は、例年蚊の活動が活発になる7月頃から始まり年末まで報告が続くのが特徴ですが、春先も注意が必要です。
米国では2012年は患者数5,387名(うち死亡者243名)が報告されています(同年12月11日時点のデータ)。

○発生地域:アフリカ、欧州南部、中央アジア、西アジア、近年では北米地域、中南米、ロシアにも拡大している。
○感染経路:ウイルスを保有した蚊(主にイエカ類)に吸血された際に感染する。媒介する蚊は多種類に及ぶ。
○主な症状: 2 ~14日(通常1日~6日)の潜伏期のち、発熱、激しい頭痛、関節痛、筋肉痛、背部痛、発疹など。感染者の一部は脳炎を発症する。
○感染予防:長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。虫除け剤や蚊帳の使用等により、屋内のみならず屋外でも蚊に刺されないように注意する。室内の蚊の駆除を心がける。

○参考情報:  
厚生労働省「ウエストナイル熱について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/west_nile_fever.html

FORTH/厚生労働省検疫所「ウエストナイル熱」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name29.html

国立感染症研究所「ウエストナイル熱/ウエストナイル脳炎とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/wnv.html

(5) クリミア・コンゴ出血熱  
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスによる発熱性出血熱を特徴とする感染症です。このウイルスは、ヒツジなどの家畜とダニの間で維持されています。死亡率の高い感染症で、北半球では4月から6月に流行します。特に、中央アジアや中東では、毎年患者が発生しています。

○発生地域:中国西部、東南アジア、中央アジア、中東、東ヨーロッパ、アフリカ。
○感染経路:ダニに咬まれたり、感染動物(特にヒツジなどの家畜)と接触したりして感染する。
○主な症状:発熱、関節痛、発疹、紫斑(出血)、意識障害など。
○感染予防:長袖、長ズボンを着用し、素足でのサンダル履き等は避ける。また、家畜などにむやみに触れない。

○参考情報
FORTH/厚生労働省検疫所「クリミア・コンゴ出血熱」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name38.html

国立感染症研究所「クリミア・コンゴ出血熱とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/345-cchf-intro.html

2 .動物由来感染症  
「動物由来感染症」とは動物から人に感染する病気の総称です。日本での発生はありませんが、海外では、人に重篤な症状を起こす感染症が存在しています。 野生動物や家畜はどのような病原体を持っているかわからないことが多く、重篤な感染症の病原体を持っている可能性もあります。海外では、むやみに動物に触れることは避けてください。

(1) 鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)
・鳥インフルエンザH5N1 について
H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスを病原体とする鳥インフルエンザは、東南アジアを中心に家きん(ニワトリ、アヒルなど)の間で発生しています。 人が感染した場合には、重篤な症状となることが多く、世界保健機関(WHO)によると、2003年11月から2013年3月15日までに世界15か国で622人(うち死亡378人)の発症者が報告されています。2013年も、新たな患者が、中国、カンボジア、エジプトで確認されています。

○発生地域:東南アジアを中心に中東・ヨーロッパ・アフリカの一部地域など
○感染要因:感染した家きんやその臓器、体液、糞などとの濃厚な接触
○主な症状: 1~10 日(多くは 2~5日)の潜伏期間ののち、発熱、呼吸器症状、下痢、多臓器不全など。
○感染予防:家きんやその臓器等との接触を避け、むやみに触らない。生きた鳥が売られている市場や養鶏場にむやみに近寄らない。手洗いやうがいの励行(特に発生国・地域では徹底する)。

・鳥インフルエンザA(H7N9)について

中国では2013年3月以降、新たにH7N9亜型の鳥インフルエンザのヒトへの感染が確認されており、2013年4月25日までに中国北・東部(上海市,安徽省、江蘇省、浙江省、北京市)及び台湾で感染症例110名(うち死亡者23名)が確認されています。なお、感染源については、今後の調査で明らかになりますが、鳥が感染源ではないかと言われています。2013年4月現在、ヒト-ヒト感染は確認されていません。

○参考情報:
厚生労働省「鳥インフルエンザ」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/index.html

FORTH/厚生労働省検疫所「鳥インフルエンザ(H5N1)」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name54.html

厚生労働省「鳥インフルエンザA(H7N9)について」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/h7n9.html

FORTH/厚生労働省検疫所「中国で発生している鳥インフルエンザ(H7N9)について」
http://www.forth.go.jp/news/2013/04041512.html

国立感染症研究所「インフルエンザA(H7N9)~新着情報~」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flua-h7n9/3395-n7n9top.html

(2) 狂犬病  

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症です。人は感染動物(アジアでは主として犬)に咬まれることよって唾液からウイルスに感染し、長い潜伏期の後に発症します。発症すると有効な治療法は無く、死に至ります。世界における死者数は毎年5万5千人といわれています。感染動物に咬まれたら、直ちに狂犬病ワクチンを接種することにより発症を防げます。
我が国では、2006年にフィリピンで犬に咬まれ帰国後に発症し死亡した事例が2例報告されています。
2008年11月には、狂犬病が発生していなかったインドネシア・バリ島で犬の間で狂犬病が流行し、発病した犬に咬まれた住民が死亡しています。現在でもバリ島での狂犬病流行は継続しています。
狂犬病は予防できる感染症です。狂犬病流行地で犬や野生動物に接する機会がある場合、渡航前にワクチンを接種しておくことが望ましいです。犬などの動物に咬まれたら、すぐに傷口を石けんと水でよく洗い、できるだけ早く現地の医療機関を受診し、傷口の消毒や狂犬病ワクチンの接種を受けましょう。また、感染の恐れがある場合は帰国時に検疫所にご相談下さい。

○発生地域:世界のほとんどの地域。特にアジア、アフリカ。
○感染要因:動物(アジアでは特に犬)から咬まれること。アメリカ大陸では、狂犬病ウイルスに感染したコウモリに咬まれて死亡する事例が報告されている。 なお、その他に感染源とされる動物は、ネコ、アライグマ、キツネ、スカンク等がある。東ヨーロッパではキツネ、タヌキ等の野生動物で狂犬病が流行しており、注意が必要である。
○主な症状: 1 ~ 3 か月の潜伏期間の後、発熱、咬まれた場所の知覚異常、恐水・恐風症状等の神経症状、飲み込み困難、けいれんなど。
○感染予防:犬等(猫、野生動物等、特に飼い主のわからない動物)にむやみに近付かない(特に小さな子供を動物のそばで1人にしない)。もし犬等に咬まれたり引っかかれたりした場合は、傷口を石けんと水でよく洗い、速やかに医療機関を受診し、消毒等の処置をした上で、狂犬病ワクチンの接種について医師に相談する。渡航地で動物と頻繁に接触する場合や地方(農村部等)で野外活動を行う場合は,渡航前に狂犬病ワクチンの接種を受けておく。

○参考情報:  
厚生労働省「狂犬病について」:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/index.html

FORTH/厚生労働省検疫所「狂犬病」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name47.html

国立感染症研究所「狂犬病とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ka/rabies.html

(3) エボラ出血熱  
主にサハラ砂漠以南のアフリカ熱帯雨林地域で流行している、ウイルスによる発熱性出血熱を特徴とする感染症です。現在まで、アフリカ西部のコートジボワールとアフリ カ中央部で発生しています。 2012年はウガンダ、コンゴ民主共和国で発生しており、引き続き現地での情報に注意する必要があります。

○発生地域:アフリカ(中央部~西部)
○感染要因:ウイルスの自然宿主はコウモリとされている。感染したサルなどの血液、分泌物、排泄物、唾液などとの接触でも感染する可能性がある。また、エボラ出血熱患者に接触して感染する場合が最も多い(院内感染など)。流行地域の洞窟に入ることは感染リスクの一つ。
○主な症状: 2 ~ 21日の潜伏期ののち、発熱、頭痛、下痢、筋肉痛、吐血、下血など。 インフルエンザ、チフス、赤痢等と似た症状を示す。
○感染予防:流行地への旅行を避ける。野生動物との接触に注意する。洞窟に入らない。

○参考情報:
FORTH/厚生労働省検疫所「エボラ出血熱」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name48.html

国立感染症研究所「エボラ出血熱とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/342-ebora-intro.html

(4) マールブルグ病  
マールブルグ病はエボラ出血熱とともに、ウイルスによる発熱性出血熱を特徴とする感染症であり、アフリカのケニア、ジンバブエ、コンゴ民主共和国、アンゴラなどで発生しています。 2008年にはオランダ、米国の旅行者がウガンダの洞窟に入り、帰国後にマールブルグ病を発症・死亡した事例が報告されています。また、2012年にはウガンダで流行が発生しており、引き続き注意が必要です。

○発生地域:サハラ以南のアフリカ
○感染経路:ウイルスの自然宿主はコウモリとされている。洞窟内ではコウモリから排泄されたウイルスが原因となり、経気道感染することがある。感染したサルなどの動物の血液、分泌物、排泄物、唾液などとの接触でも感染する可能性がある。マールブルグ病患者に接触して感染する場合が最も多い(院内感染など)
○主な症状: 3 ~ 10日の潜伏期ののち、初期には発熱、頭痛、悪寒、下痢、筋肉痛など。その後体表に斑状発疹、嘔吐、腹痛、下痢、出血傾向。
○感染予防:流行地への旅行を避ける。野生動物との接触に注意する。洞窟に入らない。

○参考情報:  
厚生労働省「マールブルグ病に関する海外渡航者への注意喚起について」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou25/index.html

FORTH/厚生労働省検疫所「マールブルグ病」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name49.html

国立感染症研究所「マールブルグ病とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/343-marburg.html

3.諸外国での感染に注意すべき感染症
WHOは、麻疹については「麻疹排除計画」により、ポリオについては「ポリオ根絶計画」により、感染者の減少に取り組んでいます。
日本では、麻しんは2008年に11,013人の患者報告があり、2012年には293人まで減少しています。また、ポリオは、30年近くにわたり野生株によるポリオ症例は発生していません。そのため、流行地からの輸入症例に留意する必要があります。

(1) 麻疹(はしか)  

2011年には世界中で年間15万8,000人以上の麻疹による死者がいると推計され、その多くは5歳以下であると報告されています(WHOファクトシート2013年2月)。
○発生地域: 2011年は排除宣言が出されている米国、カナダに加えて、患者数が減少していたヨーロッパ諸国やニュージーランドでも患者報告数が増加した。ヨーロッパ諸国では2011年10月末までに40カ国から計約26,000人の麻疹患者の報告があり、特にフランス、イタリア、ルーマニア、スペイン、イギリスからの報告が大半を占め、麻疹による急性脳炎も7人報告されている。その他、アフリカ、アジアなどの予防接種率の低い国では依然として患者数が多い。

○感染経路:空気感染、飛まつ感染、接触感染。
○主な症状:発熱、咳、鼻水、目の充血・目やになどが 2~3日続いた後、39℃以上の高熱と全身に発疹が出る。肺炎、中耳炎、脳炎が起こる場合もある。
○感染予防: 麻しんワクチンの予防接種が有効。海外では、麻しんだけではなく、風しんも同時に流行しているので、ワクチン接種を受けていない場合には麻しん風しん混合ワクチンの接種が勧められる。最近、海外で麻しんウイルスに感染した患者も確認されている(定期予防接種は1歳から2歳未満に1回目の予防接種を受け、小学校入学前1年の間に2回目の予防接種を受ける)。

○参考情報:  
FORTH/厚生労働省検疫所「麻しん」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name62.html

国立感染症研究所「麻疹とは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html


(2) ポリオ
2012年には、世界で223人の患者が報告されました(WHO世界ポリオ根絶計画事務局による集計)。日本では、30年近くにわたり、野生株によるポリオ症例は発生していませんが、ポリオ流行地で感染し、帰国後に発症する事例(輸入症例)に留意する必要があります。

○発生地域:流行国は、アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3か国だが、周辺国でも輸入症例の発生が報告されている。2011年はパキスタン、チャド、コンゴ民主共和国等で多数の患者が報告され、中国新疆ウイグル自治区でもポリオの流行が報告された。2012年には、ナイジェリア、パキスタン、アフガニスタンで、引き続きポリオ流行が認められた。2013年は流行国3カ国のみで、野生株ポリオウイルスによるポリオ症例が報告されている。

○感染経路:経口感染(感染者の糞便中に排泄されたウイルスが、口から体内に入る)。
○主な症状: 感染した人の多くは症状が出ずに経過するが、中には典型的な麻痺型ポリオを発症し、発熱等かぜのような症状が1~10日続いて、手足に非対称性の弛緩性麻痺(だらりとした麻痺)が起こる。
○感染予防:ポリオワクチンの予防接種が有効。また、流行国では、十分に加熱されていない物の飲食は避け,食事の前には手洗いを行う。なお、WHO では患者発生のある国に渡航する場合には、ポリオの予防接種を受けていても、出発前の追加接種を勧めている。

○参考情報:  
厚生労働省検疫所「ポリオ」
http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name09.html

国立感染症研究所「ポリオとは」
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ha/polio.html

4.そのほか注意すべき感染症  

・手洗いをこまめにしましょう
 食事の前には必ず石けんと水で洗いましょう。きれいな水が使えない場合は、手洗い後にアルコール性消毒剤を使用しましょう。

・生水を飲まないようにしましょう
 ふたが開いていないミネラルウォーターが最も安全です。水道水は、しっかりと沸騰させてから飲みましょう。水を沸騰させることが出来ない場合には、飲料水消毒用薬剤を使用しましょう。

・氷を避けるようにしましょう
 屋台や不衛生な飲食店で提供される水は、病原体に汚染されていることがあるので注意しましょう。自分で氷を作る場合は、ミネラルウォーターを使用しましょう。

・完全に火の通った食べ物を食べましょう
 生鮮魚介類や生肉などは食べずに、十分に加熱されたものを食べましょう。加熱調理された料理であっても何時間も室温で保管されていると、病原体が増えてしまいます。屋台や不衛生な飲食店では、作り置きされている料理が出されることがあるので注意しましょう。

・サラダや生の野菜は避けましょう
 野菜類は生水を用いて処理されている場合など、病原体に汚染されていることがあります。野菜やフルーツなどは、自分で皮をむいたものを食べましょう。  渡航先や渡航先での行動内容によって、かかる可能性のある感染症はさまざまですが、特に水や食べ物から感染する消化器系の感染症(A型肝炎、E型肝炎、コレラ、赤痢、腸チフスなど)は、開発途上国など公衆衛生の整備が不十分な地域での感染リスクがより高いので、上記のような注意が必要です。また、生鮮魚介類や生肉等を介した寄生虫疾患にも注意が必要です。

5.海外の感染症に関する情報の入手  
海外の感染症に関する情報は、厚生労働省検疫所及び外務省のホームページから入手することが可能です。出発前に渡航先の感染症の流行状況等に関する情報を入手することをお勧めいたします。また、日本国内の空港や港の検疫所においても、リーフレット等を用意し情報提供を行っていますのでご活用ください。

○感染症に関するホームページ
■世界各地の感染症発生状況  
● FORTH/ 厚生労働省検疫所ホームページ
  http://www.forth.go.jp/index.html

●外務省海外安全ホームページ> 感染症関連情報
  http://www.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/index.html

■感染症別の詳細情報  
● FORTH/ 厚生労働省検疫所ホームページ 感染症についての情報
  http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name.html

●国立感染症研究所 感染症情報センターホームページ > 疾患別情報
  http://idsc.nih.go.jp/disease.html

■予防接種に関する情報
●FORTH/厚生労働省検疫所ホームページ 命を守る予防接種
 http://www.forth.go.jp/useful/attention/02.html

■渡航先の医療機関等情報
●外務省ホームページ > 渡航関連情報 > 在外公館医務官情報
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html

(問い合わせ先)
○外務省領事サービスセンター(海外安全相談担当)
 電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902

○外務省領事局政策課(医療情報)
 電話:(代表)03-3580-3311(内線)2850

○外務省海外安全ホームページ:http://www.anzen.mofa.go.jp/
 (携帯版)http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp
 
 
 

 
       

        

                  

          

法的事項アクセシビリティーについてプライバシーポリシー