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2013年6月
1.概況
2013年第1四半期のキプロス経済は、建設業や製造業などの第2次産業をはじめ、観光業・銀行業・運輸業等が低迷し、GDP成長率は前年同期比4.4%減となった。
キプロスでは、4月30日、3月にユーログループで承認された100億ユーロの対キプロス支援の覚書(MoU)の国会採決が行われ、賛成29票、反対27票で可決された。同MoUは、銀行再編措置、財政再建措置、構造改革及び民営化計画などを含むものとなっている。
5月13日、ESM(欧州安定メカニズム)取締役会が対キプロス融資の第一弾として30億ユーロの融資を行うことを承認したことを受け、5月13日に第一回目の融資として20億ユーロ分、6月26日に10億ユーロの融資が実施された。
一方、6月27日、キプロス政府は3月のユーログループでの合意に基づき、キプロスの財政再建プログラムの一環として債務交換を実施すると発表した。これは財政再建プログラム実施期間(2013年~2016年第1四半期)に償還を迎える10億ユーロ分の既発政府債を5種類の新規債と交換するもので、新規債の償還期間は5年~10年で、表面利率は既発債と同率となっている。キプロス政府は声明の中で、今回の債務交換は政府のキャッシュフロー管理を容易にし、キプロスの長期公的債務目標の達成を妨げずに資金調達を確保するためのものであると説明した。そして数日後の7月1日に同債務交換が完了したことを発表した。
2.財政
財務省の発表によれば、2013年第1四半期の歳入は16億620万ユーロ(前年同期比7.6%減)となった。また、歳出は15億6,200万ユーロ(前年同期比17.2%減)となり、財政収支は4,420万ユーロの黒字(前年同期は1億4,800万ユーロの赤字)となった。
主な歳入は、生産税及び輸入関税による税収が4億5,150万ユーロ(前年同期比25.1%減)、VATによる税収が2億4,480万ユーロ(同28.5%減)、所得税及び富裕税による税収が4億1,170万ユーロ(同22.8%減)となった。一方、歳出については、公務員人件費が6億960万ユーロ(前年同期比6.9%減)、社会移転が4億4,950万ユーロ(同23%減)となった。
3.主な産業
(1) 観光業
2013年5月の観光客数は27万6,244人(前年同月比0.2%減)となった。個別には、ドイツからの観光客が1万923人(前年同月比27.1%減)、ギリシャが9,311人(同18.7%減)、英国が10万3,579人(同8.6%減)となった。一方、ロシアからの観光客が増加し、7万6,776人(同43.0%増)となった。
(2) 建設業
2013年1月~3月の建築許可証発行数は、1,397件と前年同期比30.0%減となった。
4.その他
キプロス国債の格付け状況
(1) 6月28日、キプロス政府による債務交換の発表を受け、格付け会社フィッチは、これをディストレス債券の交換(distressed debt exchange: DDE)と見なすとして、キプロスのソブリン格付けを「CCC」から「制限的デフォルト(RD)」に引き下げた。また同日、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はキプロスのソブリン格付けを「CCC」から「選択的デフォルト(SD)」に引き下げた。
(2) しかし、7月1日に債務交換が完了すると、同3日、S&Pは、キプロスのソブリン格付けを「選択的デフォルト(SD)」から「CCCプラス」に引き上げ、見通しは安定的とした。同社は、今回の格付けを債務交換前の格付け(CCC)より一段階上げしたことについて、トロイカより10億ユーロの第二回融資が実施されたことや、8億ユーロ分のユーロ建てキプロス国債の償還期限が本年6月28日から2014年7月1日まで延長されたことで政府の流動性逼迫が緩和されたためとしている。また、5日、フィッチはキプロスのソブリン格付けを「制限的デフォルト(RD)」から「CCC」に引き上げた。
5.経済指標
(1) GDP成長率
2013年第1四半期のGDP成長率は前年同期比-4.4%となった。
(2)消費者物価指数
2013年6月の消費者物価指数は前年同月比0.1%の上昇となった。
(3) 失業率 2013年5月の失業率は、16.3%となった。
出典:(1)及び(2)キプロス財務省、(3) EU統計局(ユーロスタット)
※各種公表資料・報道等参照
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