ギリシャ経済最新情報

 
2009年12月

1.概況
ギリシャ経済は過去80年間で最も深刻と思われる金融危機を迎え、GDP成長率は、2009 年第1四半期は前年同期比-0.5%、第2四半期は-1.2%、第3四半期は-1.7%となった。 GDP 成長率の減速は、主に民間消費、投資及び輸出低下によるものと考えられている。2009年全体のGDP成長率についても-1.2%、2010年も同様にマイナス成長になることが予想されている。

世界的な不況の中、特に影響を受けている海運業を中心とした対外貿易は、 2009 年第1四半期に前年同期比- 20% となり、2009年全体では、前年の4.1% から、-11%の落ち込みが予想されている。また、ギリシャの 2009 年第1四半期における国外からの観光客は-8.6% まで落ち込み、ホテル宿泊費等の観光客による消費は-14.8% ( EU27カ国は平均は -7.4%)となった。

低迷する経済状況は消費者や企業に懸念を生じさせるとともに、 2009 年第 1 四半期は特に住宅産業、製造業、小売業において経済活動が減速した。また内需の低下は、主に贅沢品、耐久消費財、エネルギー製品等への投資に影響を及ぼしていると考えられている。



2.財政
(1)ギリシャの財政状況悪化の経緯
①経緯
対GDP比財政赤字3%以内というEUの財政規則を大幅に超えて12.7%となったギリシャの財政不安が国際的に問題視されている。

10月の政権交代後、現政権は前政権が財政赤字を過小評価していたとして、6%程度と見られていた2009年財政赤字を12.7%となる見込みである旨表明したことにより、ギリシャ政府へのEU及び市場の信頼が失墜した。また、ドバイ問題の影響から投資家によるリスク回避の傾向を示され、ギリシャ国債金利やCDSスプレッドも上昇し、12月に入り、格付け会社3 社によりギリシャ国債の格下げが行われた。

ギリシャは比較的健全な金融部門の存在などもあって、 2008年秋の世界金融危機にも拘わらず、同年経済成長率はプラス成長を保っていた。ギリシャの財政赤字は今回の統計の修正で表面化したが、 2009年の経済成長率もマイナスが予想されており、金融危機による影響が観光客減少などを通じて遅れて影響が現れ、回復に時間を要すると思われていることも財政問題に対する懸念材料となっている旨報じられている。

②構造的問題
ギリシャは公務員比率が非常に高く、経済危機においては失業率の激増やGDP成長率の激減を押さえる役割を担ってきたが、財政悪化の一因ともなっている。課税対象から潜り抜けている闇経済の存在も大きく(一説にはGDPの30% 以上と報じられている)、複雑な年金制度や公的部門の民営化の遅れ等の社会基盤制度に問題点も多い旨指摘されている。


(2)ギリシャ政府の対応
ギリシャ 政府は、11月5日に2010年財政赤字目標を対GDP比9.4%と発表したが、同月20日に議会へ提出された最終予算案においては 9.1% を目標としている。当該予算案においては、歳出568億ユーロ(2009年は591億ユーロ)、歳入537億ユーロ(2009年は492.6億ユーロ)を予定している。

12月14日、首相は経済改革計画を発表した。当該計画においては、政府運営費10 削減、公務員新規採用凍結、海外プレスオフィス閉鎖、政府観光局海外事務所一部閉鎖、軍事費削減、公営企業役員給与削減、政府系銀行役員特別手当凍結、民間銀行役員特別手当に対する課税強化、ゼロベースからの予算査定、 2011年からの3年予算の導入、脱税防止・歳入増大に向けた税制改革等を示している。この計画により、 2010年財政赤字を対GDP比8.7%に抑え、 2013年には3%以下にする旨宣言している。
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1 9月に前政権は2009年財政赤字を6~8%と想定していたが、10月、新政権は12.5%、その数日後に12.7%となる旨修正を行った。財務大臣は当該修正理由について、①予想を上回る景気減速、②前政権による未報告歳出、③医薬品の支払いなど一部未計上の歳出の3点を原因として説明し、今後は法改正により統計局の独立を強化する旨表明している。

また、ユーロ以外のドル建てや円建ての国債発行も視野に資金調達手段の多様化も検討されるとともに、財務大臣が投資家説明を行うなど積極的な姿勢を示している。
政府は、2009年の政府債務を対GDP比113% 、2010年は120.8%と推測しているが、欧州委員会では約125% と推測している。


(3)今後の動き
①財政再建に向けた実施計画・構造改革
ギリシャ政府は2010年1月中には具体的な安定成長計画を EU へ提出することとなっており、財政再建に向けた具体的な措置は当該計画を見る必要がある。

新たな資金融通等厳しい環境にはあるが、中道左派の現政権は労働者組合等との関係も良好であり、右派政権に比すると構造改革実施に適した政権と見られている。現時点においては、政府の財政再建施策に対する国内支持も50%を超えているとの報道もあるが、ギリシャ経済はかなりの割合を内需が支えており、政府の再建計画が賃金カット等に大きく傾くと、この内需を更に冷え込ませる事態となるため、内需の堅持も重要な施策であると考えられている。

②金融関係分野
ギリシャ国債の引受先として最も期待される ECBでは、 2011年からA-を下回る国債引受は行わないため、最悪の事態においては、ギリシャの各銀行の資金調達に困難が生じ、産業界全体への資金流動性に問題が生じることも想定されている。一方で、ギリシャの銀行は伝統的業務に終始し、貸出高に対する預金比率が 80% を超えており、市場からの調達割合は少ないことから、銀行における影響は限定的との見方もある。ただ、ギリシャ中央銀行はギリシャの各銀行に対し、 ECB 以外からの資金調達手段の検討を促している。

また、ギリシャ国債は国外での運用が多く、 EU 加盟国の金融機関が有しているケースもあり、ギリシャ国債の格下げは EU 内にも影響が出るとの観測もある。欧州中央銀行総裁やユーログループ議長からギリシャは破綻しない旨の発言がある一方、現状では EU がユーロ圏加盟国への財政支援実施可能となるルールは存在しない。


3.雇用
2009年第2四半期の失業率は、観光業等におけるパートタイム労働者の増加により一時的に低下したが、8月は9.0%、 9月は9.1%となっており、2009年全体では9.5%程度になると予測される。前政権により若年失業者や観光・建設・中小企業支援等を目的とした雇用促進・公的機関への雇用に対する補助金を含む 250億ユーロの支援プログラムが発表されていたが、現政府が表明している公務員採用凍結等の影響もあり、OECD及び欧州委員会はギリシャの 2010 年失業率を10%以上と予想している。
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2 金融危機を受けて 2008年11月に政府が導入した280億ユーロの銀行支援スキームについて、ギリシャの銀行は40%程度のみの利用に留まっている。


4.輸出入
2009年の内需の低下は、商品・サービス全般の輸入にも影響し、2009年第1四半期は前年比-19.2%まで落ち込んだ。 2009 年全体は約-15%、2010年も更に下降することが見込まれている。

一方、商品サービスの輸出は、2009年上半期は-15.5% まで減少し、 2009 年全体は-12 %程度と予想されている。 2010年には、国際的な経済回復が見られれば、1.5 %程度の若干の増加が期待される。


5.消費
民間消費の成長は、 2009年は-0.7%と予想されており、 2008年の減速に続き 2009年も下降が見られた。一方で、可処分所得は1%程度上昇しているものと予測されており、民間消費減少の主要因としては、消費者がより慎重になり、節約思考が高まったことが挙げられている。


6.主な産業分野
(1)住宅産業
2005年の減税措置等により 2006年に急激に増加した住宅建設の成長は、下降傾向が続き、 2009年7月は- 31.8 %、同年1月から7 月までは-28.7% となっている。住宅投資の成長率も下降が続き、 2010 年は-9.5 %程度と予測され、 2011年後半まで回復が見られないと考えられている。

(2)海運業
2009年1月から8月までの海運収益は、前年比-35.2 %まで低下しており、2009年全体では-28%、収益は、 2008年の99 億ユーロから約74 億ユーロまで落ち込むことが予想され、国内消費や住宅投資に影響を与えることが懸念されている。

(3)観光業
2009年第3四半期は主要な観光シーズンとなっており、上半期と比べ活発なものとなったが、2009年1月から9月までの外国人観光客数は前年比-7.4 %(同年第 2 四半期は前年比-8.6 %)、 2009 年1月から8月までの外国人観光客に関する経常収支は-13.2 %(同年1月から7月までは-15.8 %)であった。


6.民営化・構造改革
(1) MIGによるオリンピック航空の業務開始
元国営航空会社であるOA (オリンピック・エアー)は、 10月1日、アテネを拠点とするMIG (マーヴィン・インベストメント・グループ)のもと正式に業務を開始した。また、OAの子会社であるマケドニア航空は、ビジネス及び観光利用を目的に設立され、テッサロニキに本社が置かれる予定である。


(2)ピレウス港でのストライキ
10月1 日、ピレウス港(OLP)の労働組合は、中国系企業コスコ社の業務運営契約の取消を求めストライキ活動を開始し、11月11日まで断続的行われた。ストライキの期間中、5,500台のコンテナがピレウス港埠頭にて待機し、また、多くの船舶が近隣の港へ荷物の搬出を行った。当該ストライキは、裁判所により違法と判断されている。


(3)社会保障システムの改革
12月8日、労働・社会保障大臣は、複数の社会保障基金を会社員、自営業者及び農業従事者に対応する3つの基金に併合することや、最低年金額の設定、再雇用のインセンティブの創出等、社会保障システムの改革に向けた10の政策を発表した。

(4)財政状況の改善に向けた政策
2010 年予算案では、オフショア企業への課税見直しを含むあらゆる所得を対象とした課税スキーム、脱税経歴者への監視強化、各種財産移動の包括的確認などを規定する新税法の導入により25億ユーロの増収が期待されている。その他、社会保障基金、地方組織、その他公的機関からの剰余金が 30.1 億ユーロ(2009年は19.9億ユーロ)と予測され、煙草及びアルコール飲料への10% 課税(2.5 億ユーロ増収)も予定されている。高額所得者への税率 45%課税等を含む新税法は、3月に議会へ提出予定となっている。


7.その他関連情報
(1)サウス・ストリームの建設

ガスプロム社(露)は 2010年末に天然ガスパイプラインであるサウス・ストリームの建設開始を計画しており、2015 年稼働の見込みである。 10月20日、同社のコムレフ局長はプレスに対し、パイプラインはギリシャを横断し、数年以内にギリシャで必要となる発電用、工業用及び家庭用の天然ガスを追加供給することになると述べた。ガスプロムとギリシャ・ガス輸送システム管理会社( DESFA )は、ギリシャにおける合弁企業の設立に合意予定である。


(2)ギリシャ国債の格下げ
12月、大手格付け3社はギリシャの財政悪化状況を受けて、ギリシャ国債の格付けの引下げを行った。フィッチ社及び S&P社が「A-」から「BBB+」へ、ムディーズ社が「A2」から「A1」へ引き下げた。ギリシャの格付けがAを下回ったのは10年ぶりのことで、ユーロ圏ではギリシャのみとなった。

(3)再生可能エネルギー資源( RES )に関する法案
12月8日、環境・エネルギー大臣は再生可能エネルギー資源(RES)の利用促進を図り、2020年までに約8000~1万メガワットのクリーン電力導入を目標として、現在長時間を要しているライセンスの発行手続きの簡素化等を含む法案を提出した。

(4)低所得者支援
12月8日、低所得者支援を目的とした500万ユーロ以上の利益を有した企業(国内300社に影響)への特別課税、 40万ユーロ以上の不動産への特別課税などを規定する新法が議会にて可決された。

※ 各種公表資料参照

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